日本カヌー連盟は9日、昨年9月のスプリント日本選手権(石川県小松市)で鈴木康大選手(32=福島県協会)が小松正治選手(25=愛媛県協会)の飲み物に禁止薬物の筋肉増強剤メタンジエノンを混入させ、小松選手がドーピング検査で陽性となったと発表した。鈴木選手は2020年東京五輪代表入りを争うライバルを陥れようとしたと説明しているという。

 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によると、他者からの混入によるドーピング違反発覚は国内初。カヌー連盟は鈴木選手を定款上最も重い除名処分とする方向で、3月にも理事会に提案する。石川県警も捜査に乗り出した。

 JADAは鈴木選手に8年間の資格停止処分を科し、暫定的に資格停止としていた小松選手の処分を解除した。

 ともに昨夏の世界選手権に出場したトップ選手。五輪のフェアプレー精神に反する極めて悪質な鈴木選手の行為で、東京五輪の開催国として大きなイメージダウンとなった。

 スポーツ庁の鈴木大地長官は「日本のスポーツ史上あまり聞いたことがない性質のもので、非常にがっかりしている」と話した。

 カヌー連盟の古谷利彦専務理事によると、小松選手の陽性反応を知った鈴木選手が昨年11月、電話で混入を認めた。鈴木選手には若手の台頭で焦りがあったという。10年ごろから国内大会や日本代表の海外遠征中にパドルの破損や紛失、現金の盗難などが度々発生。鈴木選手は一部への関与を認め、小松選手以外への妨害行為も証言した。

 禁止物質を含むサプリメントの錠剤は、昨年8月中旬の海外遠征中にインターネットで購入したことも分かった。石川県警は禁止薬物混入のほか、競技で使用する道具を盗まれたとする被害届を小松選手から受理した。

 古谷専務理事は「スポーツマンシップという日本人のみなさんが長年積み上げられてきた美徳を著しく失墜させるもの。指導が行き届かず、おわび申し上げる」と謝罪した。

 カヌー連盟はドリンク保管所を大会中に設置するなどの再発防止策も発表した。