昨年9月のカヌーのスプリント日本選手権でライバルの飲み物に禁止薬物を混入させた鈴木康大(32=福島県協会)が、被害者の小松正治(25=愛媛県協会)に宛てた謝罪の手紙で、日頃から練習や食事をともにした同選手のことを「一番好きな仲間」「一生家族ぐるみで付き合っていける関係」と考えていたと打ち明け、自身の裏切り行為は「どんなに謝罪しても許されることではない」とつづっていたことが17日、関係者への取材で分かった。

 鈴木は、知らずに飲料を飲んでドーピング検査で陽性反応が出た小松から、10月20日に電話で相談を受けたという。手紙で「一番信頼してもらっていたからこそ私を頼って相談をしてきてくれたのに、その私が犯人だったのです。その時、事の重大さに気付き、その日の夜から小松選手にすべてを打ち明けようと何度も考えました」と告白。自分の家族のことを考えるとなかなか言い出せなかったが、「自分も小さな時から五輪に出たいと夢見ていたのに、こんな卑劣な手段を使って人の夢を諦めさせてはいけないと思いました」とし、11月20日に日本カヌー連盟幹部に真相を伝えた。

 鈴木は、小松の技術や若さを脅威に感じ、2020年東京オリンピック(五輪)出場に向けて「何としても勝ちたい」との思いから、ほかにもパスポート隠し、職場への中傷メール送付などの嫌がらせ行為をしてしまったと説明。「いかなる処罰も受ける覚悟でいます」とし、競技から一切身を引くことも記している。