女子シングルスで、昨年覇者の平野美宇(17=エリートアカデミー)が苦しみながらもベスト8に進出した。世界ランク30位の芝田沙季(20=ミキハウス)にフルゲームの末、4-3で競り勝った。15日の開会式では選手宣誓を務めた。家族と相談し「卓球の力が世界を平和に導く」との言葉を入れた。五輪の理念はスポーツを通して平和実現に貢献すること。17歳にして大きな理想を胸に抱き、トップ選手の責任感を持ちながら連覇を目指す。

 トップアスリートのプライドだった。女子シングルス6回戦の芝田戦。3-3で迎えた最終第7ゲームは10-10までもつれた。絶体絶命の危機だったが、昨年覇者の平野は強気を貫く。この1年磨いたフォアハンドで11点目を奪うと、最後は根負けしたように相手のレシーブはネットにかかった。

 スピードある攻撃的スタイルで席巻した昨年とは違う。「自分の卓球をみんな知っている」と警戒され研究し尽くされていることを自覚する。だからこそ、苦戦も想定内。「(マークされた状況で)力を発揮するための練習をしてきた」と連覇への困難な道程を覚悟している。

 15日の開会式で、選手宣誓を務めた。「スポーツそして卓球の力が世界を平和に導く礎となることを信じ、感謝と尊敬の気持ちを忘れずに、1球に心を込めて最後までプレーする」との言葉を入れた。両親と相談した結果だったが、当初は「世界」「平和」に違和感を覚えた。「関係ない。いやだ」と家族に訴えた。

 父光正さんからは、金メダルを目指す東京五輪が平和の祭典であること。平和だからこそ、スポーツに専念できること。トップ選手は文化、国籍などの違いを乗り越え、平和実現に貢献する義務があることを説かれた。「スポーツにはそのような力がある」と、平野も納得し、選手宣誓を一言もかまずに、無事終えた。

 今日20日からは準々決勝が始まる。連覇まであと3試合。昨年のリベンジを狙う石川、同い年の伊藤ら、強豪ライバルがそろう。「明日からどんどん強い相手と当たる。自分の卓球ができるようにしたい」。選手宣誓の言葉を実践し、平和に貢献するためにも、最後の1球まで全力を尽くす。それが連覇につながると信じている。【田口潤】