時代は渡さない。男子ダブルス決勝で水谷隼(28=木下グループ)は大島祐哉(23)と組み、上田仁(26)吉田雅己(23)を3-1で破り、同ペアでは初優勝を飾った。水谷自身は7度目のダブルス制覇。男子シングルスでは準決勝に進出、今日21日に最多10度目の優勝を目指す。決勝では最年少制覇をかけた張本智和(14)と対戦する可能性がある。昨年世界選手権では完敗しただけに「時代は終わらせない」と世代交代の阻止を誓った。女子ダブルスは世界選手権銅メダルの伊藤美誠(17)早田ひな(17)組が初優勝した。

 心身ともに充実しているからこその軽口だった。水谷は今日の男子シングルス決勝で、張本と対戦の可能性がある。昨年6月の世界選手権で敗れた14歳。今大会も史上最年少でジュニアを制するなど躍進。得点を決めたときの「チョレイ」の雄たけびも館内に響き続ける。張本の倍の年齢を重ねたベテランは「うるさいから、聞こえないように耳栓でもしようかな」とニヤリと笑った。

 前哨戦は完勝した。優勝した男子ダブルス準決勝では張本組を3-1で撃破。フォア、バックで厳しいコースを突いた結果だが、安心感はない。「120%のパフォーマンスを出している。自分も120%の力で戦わないと、負ける」。自らを鼓舞するように、危機感を募らせた。

 リオ五輪ではシングルス銅、団体銀メダルを獲得。五輪翌年の昨年は「満足して、ゆっくりしたかった」と、正直気持ちは乗らなかった。同年6月の世界選手権では張本に1-4で敗れて2回戦敗退。長らく日本人トップだった世界ランクも張本にも抜かれ、4番目に後退した。時代の終わりすら予感させたが、実はすべて想定内だった。

 五輪前のような気迫が戻らず、思うようなプレーができなかった昨年は「だめな年」と、スイッチを切った。「他の選手にスポットライトが当たって、自分が少し落ちたような感じにしたかった」。そう割り切った分、今年は「ためたパワーを爆発させたい。東京五輪へのスタートだと思っている」と、切ったスイッチを入れ、集中モードに切り替え、今大会を迎えた。

 決勝で張本と対戦する可能性のある男子シングルスは10度目の優勝がかかる。世界選手権に続き、中学生に連敗するわけにはいかない。「立ちはだかりたい。自分の時代がまだまだ終わらないことを証明したい」。10年以上も君臨する日本のエースの座。やすやすと14歳に渡すわけにはいかない。【田口潤】