女子シングルスで伊藤美誠(17=スターツ)が初の頂点に立った。同学年で連覇を狙った平野美宇(17=エリートアカデミー)を4-1で下し、女子ダブルス、混合ダブルスに続き、女子では史上3人目となる3冠を達成した。17歳3カ月での3冠は、14年度の石川佳純の21歳11カ月を抜き、史上最年少だった。

 速く、強い打球が平野のラケットをはじく。伊藤が「みうみま」の頂上決戦を制すると、両手を上げた。万雷の拍手に頭をペコリと下げた。初の女王となった17歳は「とてもうれしい。1戦1戦やりきったことが3冠につながったかな」と感慨に浸った。準決勝では女子のエース石川にも4-1で快勝。力を見せつけた。

 世間からは「みうみま」はライバル同士と評される。だが、自分の中で平野は背中を追う存在だった。脳裏にはあの敗戦がある。2年前の全日本選手権準決勝。0-4で完敗した。幼い頃から切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲のはずが「力の差がものすごくついたな」。自分が5回戦で散った前回大会で平野は史上最年少で女子シングルスを制し、世界選手権でも個人で銅メダルを取った。

 それを成長の糧とした。理想としていた「省エネ卓球」に限界を感じた。過去を捨て、動く卓球へのモデルチェンジ。専属トレーナーと1回2時間、週3回、股関節の可動域を広げた。リオ五輪後は、モチベーションの維持に苦しんだ時期もあったが、週1回ジムに通うなどフィジカルを強化。「全日本の借りは全日本でしか返せない。平野選手のおかげで自分も頑張らないといけないとの気持ちになった。感謝しています」と話した。待ち望んだ決勝は混合ダブルス、女子ダブルス、女子シングルスを含め17試合目。体力的には厳しいはずだが、心肺機能など「限界値を上げる」と3分間打ちっ放しの厳しいトレーニングも積み、鍛えたフットワークは最後まで健在だった。

 正月には静岡・磐田に帰省し、家族を前に「絶対優勝するから」と宣言した。有言実行を果たした伊藤はこれからも平野、早田ら同世代で卓球界を引っ張る覚悟だ。「大舞台で戦えるのが幸せ。将来の自分たちが楽しみ」と笑った。あどけない顔に女王の風格が漂った。【上田悠太】