2連覇を狙った17年世界選手権女子78キロ超級銀メダルの朝比奈沙羅(21=パーク24)は、準決勝で素根輝(17=福岡・南筑高)に敗れた。大会後の強化委員会では、これまでの実績が考慮されて2年連続での世界代表に選出された。

 「勝負というよりも自分自身の闘いに負けた。何も出来なかったのが本当に悔しい」

 朝比奈は目を真っ赤にしてこう言った。7日の選抜体重別選手権に続いて素根に2連敗。落胆する中、4歳年下のライバルの成長を認めた上で「負けがあるから面白い。次にどう生かすかで、自分がさらに成長できるチャンスをもらった」と、ポジティブに気持ちを切り替えた。

 この日は「特別」だった-。麻酔医の父と歯科医の母を持ち、幼少期からの夢が五輪金メダルと医師になることだ。高校時代か小児在宅人工呼吸患者とその家族らとボランティア活動を通じて触れ合ってきた。キャンプで一緒にバーベキューをするなど交流を深めてきた。今大会は患者とその家族ら13人を会場に招待した。

 豪快な柔道を見せることで「少しでも元気や勇気を届けられたら。最後は笑顔で終わりたい」と話していた。会場2階から応援した患者の田川晃夫さん(15)は「優しくて力持ちの沙羅ちゃんが、柔道着を着て畳に上がると雰囲気も変わってかっこ良かった」と笑みを見せた。

 先月28日には、1日付で柔道界では異例の大学在学中に実業団のパーク24に所属することを発表した。2020年東京五輪後に現役を引退する意向を示しており「全てが2つの夢をかなえるため」と言う。

 柔道界の先駆けを目指し、いばらの道を歩む21歳の挑戦は続く。【峯岸佑樹】