日大アメリカンフットボール部の悪質な反則問題で、日大教職員組合は31日夕方、内田正人前監督の常務理事などの全ての役職と、田中英寿理事長、大塚吉兵衛学長の辞任を求める要求書を田中理事長宛てで日大本部に提出した。趣旨に賛同する教職員の署名も集め始めた。

 教職員組合の菊地香委員長(生物資源科学部准教授)は「このままでは日大の教育、卒業生の誇りが失われるとの観点から、このような行動に至った」と要求書提出の理由を語った。

 大学トップである田中理事長の辞任を求めた経緯を要求書では「ハラスメントの温床にもなる上意下達の権威主義的な体質、権限・権力が1点に集中するピラミッド型の組織構造のあり方、といった日本大学が抱える問題に論点がシフトしている」と指摘。

 吉原令子副委員長(商学部教授)は「トップダウンで何もかも降りて来る」と話し、「教員室で多くの先生が『今回の問題、対応はまずい』と話していた。(日大の体質を)本当に変えないといけないと思っている先生方がたくさんいる」と切に語った。

 教学の現場を知らない人材が理事長、常務理事を務めていることで、現場とはかけ離れた体制になっていることも問題視した。

 3人の辞任の他に、内田氏以外の全4人の常務理事にも辞任を求めた。その理由について山本篤民書記長(商学部准教授)は「この間、謝罪、説明の不手際があった。(幹部を)一新しないと、日大のイメージも刷新しない」と説明した。

 要求書提出と同時に賛同署名も開始。組合員は約250人だが、署名募集の対象は日大、付属校全体の教職員に向けた。報復人事を恐れる教職員に配慮し、無記名賛同も許可した。菊地委員長は「100人以上は集めたい」とし、吉原副委員長は「集まらなかった場合のことは考えない。この問題を受けて、教員が変わらなかったらおかしいですよね」と語気を強めた。

 組織改革も要求した。職員採用において保健体育審議会出身者の優遇など、不透明な仕組みを改めること、同審議会下の運動部の監督、部長を常務理事・理事に登用することや、兼任を禁止することなどを求めた。

 田中理事長の辞任も含めた実行期限を1カ月後の6月30日と定めた。菊地委員長はこうも言った。「首を替えただけで、現幹部と同じ考え方の人が(常務理事などに)就任しては、報復人事も考えられる」とし、徹底した刷新を求めた。期限までに要求が実行されなかった場合、ストライキの可能性はあるか問われると「それも考えたいのは山々だが、ストライキをすれば不利益を被るのは学生。それはできない」と述べた。

 要求書には、内田前監督・井上コーチの会見、大塚学長の会見など一連の対応で「学生を守ることが出来ない、自分たちの保身や組織防衛のためには学生を平気で切り捨ててしまう大学という『負の烙印(らくいん)』が世間から押されてしまった」と厳しく指摘し、日大の信頼が失墜している現状を嘆いた。