世界28位の錦織圭(28=日清食品)がジョコビッチ(セルビア)に3-6、6-3、2-6、2-6で屈し、1933年の佐藤次郎以来85年ぶりの4強入りを逃した。亜大テニス部総監督の堀内昌一氏がこの試合を分析した。

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 錦織はジョコビッチと並ぶ世界屈指のサーブリターンの名手だが、この試合では後塵(こうじん)を拝することになった。

 錦織のサーブに対するジョコビッチのリターンは徹底されていた。狙いはエンドラインに近い錦織のバックサイド。しかもセンターに近いエリアだ。ここにボールを集中することで錦織のフォアの3球目攻撃を防ぎ、バックで十分なスイングをさせずにコースを限定し、自らの4球目攻撃とその後の展開を優位に持ち込んだ。

 錦織自身、痛めた右腕の影響からかサーブに精彩を欠いていた。スピードこそ4回戦までと変わらなかったが、回転数や切れが不足していたようだ。第1サーブの確率はほぼ互角でも得点率は59%で、ジョコビッチの85%とは大きな差がついた。リターンゲームで主導権を握られ、ストローク戦でも深いボールに苦しんで展開力を封じられた。フォアのミスが目立ったのも故障と無関係ではないだろう。

 ただ、敗れたとはいえ、苦手のウィンブルドンで十分に復活は証明できたと思う。弱点だったサーブの安定感も増している。右腕さえ回復すれば、全米でもっと素晴らしいプレーを見せてくれるだろう。

(亜大教授、テニス部総監督)