日本ボクシング連盟(山根明会長)が、アスリート助成金を不正流用するなどした疑いがあるとして、都道府県連盟の会長や理事長、歴代五輪代表選手ら333人が日本オリンピック委員会(JOC)などに告発状を送った問題で、全国大会開催県が山根会長を接待する「おもてなし」リストがあり、会長の機嫌を損ねないように他県でも参考にされていたことが31日、関係者への取材で分かった。

 不正疑惑を告発した「日本ボクシングを再興する会」(鶴木良夫代表)の告発状によると、全国大会時には、山根会長の機嫌を損ねないように、開催県が過大な負担を負っても「スイートルーム宿泊」「豪華な椅子」「好みの食事」などで接待していたという。

 リストには、高級フルーツや菓子、酒などが銘柄指定で記され、肉は「和牛肉しか食べない」、目玉焼きは「外はカリカリ中は半熟」など詳細な記述がある。

 333人の告発が明らかになって初のボクシングの全国大会となる全国高校総体「東海総体」が1日からスタートする。競技が行われる岐阜市内では、山根会長が宿泊するとみられるホテル前に報道陣30人以上が集まった。

 告発状によると、山根会長がホテル入りする際には、役員が30分以上前から玄関前で整列し、一斉にあいさつを行うなどしており、この異様な光景を見た一般宿泊客から多数の苦情が寄せられ、一部ホテルからは出入り禁止になっている。

 今回宿泊予定の岐阜市内のホテルにはスイートが2つあり、利用者は不明ながら両方ともこの日は予約済み。しかし、役員の整列はみられず、山根会長の出入りも確認できなかった。同日岐阜市内で開催された高体連の全国委員会の会議にも、出席予定だった日本連盟関係者の姿はなく、議題には「連盟からの報告」という議題があったが、担当者がおらず実施されなかった。会議では冒頭に、高体連関係者から「騒動になっているが、高校選手の大会なので、選手に集中させてあげられるようにしてください」との発言があったという。開会式会場には会長用とみられる「豪華な椅子」が一時運び込まれたが、その後撤去された。現地のボクシング関係者の間では、会長が入院したとの情報も流れており、大会に姿を見せるかは不透明となっている。

 なぜ、このような状況が続いてきたのか。再興する会関係者は「会長のひいきの選手を負けさせた審判は帰され、呼ばれなくなる。意向に背けば連盟を除名されるなど、強権的な行為を何度も見せつけられ、誰も批判できなくなっていた」と語る。過剰とも言える「おもてなし」も「機嫌を損ねて選手らが不利益を被らないように、自衛のための仕方ない措置だった」と明かした。【阿部健吾、清水優】