【南京(中国)=高場泉穂】男子シングルスの桃田賢斗(23=NTT東日本)が、世界ランク3位の石宇奇(中国)を2-0で下し、この種目で日本男子初の金メダルを獲得した。

 相手は22歳の中国選手、石。大会前から腹筋の痛みを抱えながらのアウェー戦でも、桃田は冷静にテンポよく得点を重ねた。第1ゲームは21-11と先取。第2ゲームも勢いのまま21-13と連取して、悲願の優勝を決めた。五輪、世界選手権を通じて、日本男子の世界一は初の快挙。「今までの先輩たちが築き上げたものにのっかった優勝。1人ではできなかった。これからも周りの人々への感謝の気持ちを忘れず、もっと強くなりたい」と謙虚に喜んだ。

 勝利を決めると「自分にチャンスをくれた日本の方々に」とユニホーム左胸の日の丸に、口づけした。リオ五輪直前の16年4月に、違法賭博の店に出入りしていたことが発覚。無期限の試合出場停止処分を受け、17年5月に処分が解除された。

 試合に出られない謹慎期間。チームメートの練習相手になったり、シャトル拾いをこなした。子供時代からエリート。今まで無縁だったサポート役を経験し、バドミントンをプレーできるありがたさ、喜びを学んだ。積極的にバドミントン教室などにも参加。競技を心から楽しむ子供たちを見て、原点の気持ちも取り戻した。

 今年から日本代表にも復帰。ネット前のヘアピンショットに代表される持ち前の高い技術に、フィジカルの強さが加わり、昨年7月の282位から再スタートした世界ランクを6位にまで上げ、銅メダルを獲得した15年以来3年ぶりに世界選手権に戻ってきた。

 「1度世界のトップに立った選手は確実に追われる。自分は挑戦者の気持ちでもっとレベルアップしていきたい」と慢心はない。目標とするのはプレー、ふるまいともに誰もがトップと認めるレジェンド、08年北京、12年ロンドン金メダリストの林丹(中国)、五輪3度の銀メダリスト、リー・チョンウェイ(マレーシア)だ。2人のように「観客を楽しませて、世界中の方から愛されるプレーヤーになりたい」と夢を語った。

 

 ◆違法賭博問題からの桃田の歩み

 16年4月 スーパーシリーズ(現ワールドツアー)マレーシア・オープンに出場中に賭博問題が発覚。日本協会から無期限の試合出場停止処分を受ける。

 同5月 NTT東日本の出勤停止処分が解け、練習を再開。

 17年5月 出場停止処分解除。実戦復帰となった日本ランキングサーキットで優勝。

 同7月 カナダ・オープンで準優勝。ポイントが消滅していた世界ランキングに282位で復帰。

 同12月 全日本選手権準々決勝で敗退。

 18年1月 2年ぶりに日本A代表に復帰。

 同年4月 アジア選手権優勝。

 同5月 国・地域別対抗戦トマス杯で第1シングルスを務め、日本の準優勝に貢献。

 同7月 インドネシア・オープンの準決勝で五輪3大会連続銀メダルのレジェンド、リー・チョンウェイ(マレーシア)、決勝で世界ランク1位アクセルセン(デンマーク)を破り、優勝。世界ランクは6位にまで上昇。