日本ボクシング連盟の理事が、総退陣に向けてあらためて辞任届を提出することになった。7日の臨時理事会でも複数人の連名で同届けを持参したが、山根明前会長(78)により、その場で破られていたことが判明。受理されなかったため、再び作成する運びとなった。8日に辞任声明を出した同前会長は9日、理事職も辞任する考えを示した。

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 独裁と称されたトップが辞任を決断してから一夜。決定機関に属した理事らも、再び決意をしたため始めた。ある理事は「新たな体制でゼロから始めるために、現理事はみんな引退しないとならない」と責任感をにじませた。この日から辞任届の作成に入り、各理事に渡し、日本連盟に提出する見通し。全員の賛同を得るために働きかけていくという。

 本来は再作成の必要はなかった。ただ、最初の文書はもはや効力がない。前会長の暴挙の被害にあっていた。7日、理事23人が出席し、2人が委任状を提出した大阪市内での臨時理事会。連名の辞任届を持参し、「会長、一緒に辞めましょう」と迫ったが、受け取った「ドン」はその場で破ってしまったという。決死の覚悟で身を引くことを促したが、まさかの返答で受理もされなかった。

 前会長は理事会終了後、「(進退は)一任された」と述べたが、その内幕は「らしさ」満載だった。約50年前から3年前まで続いた反社会的勢力との交友が致命傷となりながら、変わらぬ横暴な態度。翌8日の会見では自ら身を引く表明はしたが、最後まで「山根色」濃い振る舞いがあったようだ。

 連盟の吉森照夫副委員長は理事全員が辞意を固めていることを明かしており、手順を踏んで今度は受理される見込み。JOC(日本オリンピック委員会)から要請されている第三者委員会の人選などもあり、当面は森正耕太郎副会長が会長代理を務めるが、来年3月末の任期前に総退陣し、新体制へと移行することになる。

 前会長の際立つ言動が注目を浴びるが、それを容認してきた理事らにも大きな責任がある。告発状という外部からの働きかけで体制は崩壊したが、総辞職への動きは最後の自浄作用と言える。