全日本剣道連盟は17日、居合道の段位、称号審査で、受験者が合格目的で審査員らに現金を渡す不正行為が慣例化していたと明らかにした。過去2件で金銭授受の事実を既に認め、該当者に対しては16年中に処分済みという。

 居合道には初段~8段の「段位」に加え、指導力や人格などを表す、下から錬士、教士、範士の「称号」がある。審査は5月と11月の年に2度行われる。過去に行われた範士称号審査で、審査員から金銭を要求されたという受験者(受審者)の男性が6月、内閣府の公益認定等委員会に告発し、居合道をとりまく金銭授受の慣行が明るみに出た。

 連盟が金銭授受を事実として認めた12年5月の範士称号審査では、受審者1人が、審査員を務める居合道委員会委員(そのうち1人を審査員Aとする)に合計で約90万円を渡し審査での優遇を要請した。7人に10万円ずつ、1人に20万円。16年5月の8段審査では、受審者が審査員Aに対して200万円を渡した。いずれも連盟の聞き取り調査で、受審者と審査員の双方が事実を認めた。

 16年8月に審査員Aは居合道委員会を辞任。連盟は綱紀委員会の決定を待たずに17年3月、審査員Aの称号段位自主返上処分を下した。14年5月の金銭授受に関わった残り7人の審査員には、17年11月に3年間の執行猶予付きの個人会員資格停止等の綱紀処分が下った。2件とも受審者は不合格となっている。

 連盟の松原徹事務局総務部門主幹は「確かに事実として慣行があった」。審査員の名が知れ渡り、事前に接触が可能だったことも原因の1つとした。17年11月の綱紀処分後に行われた8段および範士称号審査からは、居合道委員会のメンバーを一新。さらに昇段審査当日まで審査員の氏名を徹底的に秘匿した。また、「金銭授受に関わる倫理観」を厳しいものとする注意喚起、「土産等の授受」の自粛を呼びかけている。

 ◆居合道(いあいどう)刀を抜く抜刀術を武道化したもの。真剣か模擬刀を用い、全日本剣道連盟が定める内容の「形」を制限時間内に演武する。「修業の深さ」「礼儀」「技の正確さ」「心構え」などを審判員が判定。昨年3月末時点で有段登録者は約9万人。