日本体操協会が29日、都内で、体操女子リオデジャネイロ・オリンピック代表の宮川紗江(18)への暴力行為で無期限の登録抹消と味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)での活動禁止処分を下した、速見佑斗コーチ(34)に関する一連の騒動について会見を開いた。

山本宜史専務理事は「例えオリンピックのためだと言えども、暴力は断じて許さない。これからも暴力の根絶は徹底したい。本人が許容していたとしても、認められない。この考えに基づくものであります」と断言。その上で速見コーチの暴力について、事実確認を行った。

同専務理事は、7月11日に関係者による証言に端を発し、速見氏本人含め、複数の関係者の聞き取り調査を行ったとした。その結果「13年9月から18年5月までの間、元所属先の練習場、NTC、その他において他指導者、選手がいる前で顔をたたく、髪の毛を引っ張る、体を引きずる、長時間立たせる、他の指導者や選手などが萎縮するほどの暴言の事実が認められた」と明らかにした。具体的には

◆13年9月 NTCでの国際ジュニア合宿の時に顔をたたく。

◆15年2月 海外合宿での、大声でのどなりつける行為。

◆16年1月 海外の試合で顔をたたき、顔が腫れ、練習中に怒鳴った。他のコーチからの引き留めもあった。

◆同3月 国際大会中、Tシャツをつかみ、引きずり降ろす行為。

◆同5月 前所属先で頭をたたく、怒鳴る行為で注意された。それらの行為は日常的に実施されていた。

◆同7月 海外合宿中、1時間以上の長時間、立たせていたことで厳しく注意を受けた。

◆17年1月 前所属先で暴力があり、無期限の謹慎処分。

◆同8月 NTCで髪を引っ張り、出入り口まで引きずり出した。

◆同9月 NTCで髪を引っ張り、倒すなどの行為。

◆18年4月 NTCで指導中に大声で怒鳴る。

◆同5月 東京都体育館のサブ会場でも、同様の怒鳴る行為があった。

山本専務理事は「まだ、いろいろとございますが、このような暴力を是正しようという関係者がおり、是正の機会があったにもかかわらず、繰り返し暴力を行った速見氏の行為は、倫理規定に反すると判断し、今回の処分に至った」と処分の正当性を強調。さらに「暴力は複数の指導者、選手に恐怖感を与えた。被害者本人が我慢できたからとしても、決して許されるものではない」と断じた。また「複数の情報が、それ以外にも寄せられているが本日は控えさせていただく」とも語った。

その上で、同専務理事は宮川サイドが協会の処分を不服として、20日に東京地裁に仮処分の申し立てを行ったことを踏まえ「裁判では必要に応じて証拠を出す予定」とした。そして「これらの事実を元に懲戒委員会、常務理事会で審議し、今回の処分に至った。一方、宮川選手への影響を懸念しましたが、代表候補の指導者だからといって暴力が許されるわけじゃない」と重ねて暴力の根絶という目的を強調した。

また「宮川選手が速見氏の指導を受けられないという認識は間違い。指導を続けることが出来ますが、NTCでは速見氏は規則上(指導)出来ない。他の練習場所を確保する必要はある。宮川選手はNTCは使用できます」と、宮川が速水コーチの指導を受けられないことはないことを、重ねて強調した。その上で「真摯(しんし)に反省し、都道府県協会から申請されれば再登録を検討する」とも話した。

また宮川について「宮川選手と今後のサポートについて話し合いたかったが、代理人の両親となった。16日に両親に対し、NTCの練習や、指導者をつけるサポートを提案したが、残念ながら選手と話を持つ間もなく。サポートについて協議させていただく準備はある」とも語った。【村上幸将】