なおみ新幹線が止まらない! 全米オープンで日本人初の4大大会優勝を飾った世界7位の大坂なおみ(20=日清食品)が、凱旋(がいせん)試合をわずか59分で快勝した。14年の全豪準優勝で同30位のドミニカ・チブルコバ(スロバキア)を6-2、6-1で退けた。21日予定の準々決勝で同25位のバルボラ・ストリコバ(チェコ)-同27位のアネット・コンタベイト(エストニア)の勝者と対戦する。全米優勝に対し、日本テニス協会からは過去高額の報奨金800万円が贈られた。

なおみ新幹線には重圧など全く関係ない。止まるどころか、まさに加速状態。全米で戦った7試合でもなかった10本のサービスエースをぶちかまし、全米からの連勝を8に伸ばした。「私の限界がどこにあるのか分からないわ」とニコニコ。北海道から駆けつけた母環さん方の祖父母の前で、全く余裕のなおみだった。

4年前の全豪準優勝者に対し、出した力は「80%ぐらいかな」。滑り出しから圧倒した。相手のサービスゲームで、一気に3ポイントを連取。第2ゲームの3ポイント目で、この日初めての時速193キロのサービスエース。第3ゲームでは、相手のバックの決定打に拍手を送る余裕も見せた。

第4ゲームでは、この日初の「カモーン!」が飛び出した。わずか15分で4-0とリード。第8ゲームでは最速196キロの4本のサービスエースを放つ。第2セットも第2ゲームから一気に6ゲーム連取であっという間になおみ劇場は幕を閉じた。計算したかのように1時間を1分切る59分でケリをつけた。「今日は本当にうまくいったわ」と武器のサーブに満足げ。「全米でつけた自信が大きいわ」と当然といった表情を浮かべた。

試合後は当日券完売で超満員となった会場をわかせた。コート上のインタビューで「“なおみ”よりも“なおみちゃん”と呼ばれたいと語っていたが、どう呼ばれたいですか?」と問われると「うん、なおみちゃんがいい」に大歓声。全米優勝を祝し盛大な拍手が送られると「ちょっと恥ずかしい」と日本語で照れ笑い。強いなおみは、いつものシャイななおみに戻った。

日本テニス協会も快挙に大盤振る舞いだ。同協会の畔柳信雄会長が、試合後に報奨金800万円を授与した。「日本テニスの努力の蓄積が、大坂さんの最高の結果として表れた」。800万円は協会規定では五輪金メダルに相当。協会史上最多の報奨金となった。14年全米準優勝の錦織圭は500万円だった。

次戦で対戦するかもしれないストリコバから、17年ウィンブルドンの時にもらった愛称が「新幹線」だ。「まだ試合中で食事を気をつけなくちゃいけないからカツ丼はお預けね」。プレーから何から何まで、この日は、まさになおみ新幹線の独り舞台だった。【吉松忠弘】

◆日本スポーツ界の報奨金 五輪の場合、日本オリンピック委員会(JOC)が金メダル500万円、銀200万円、銅100万円。加えて各競技団体も報奨金を与える。テニスは五輪金で800万円が最高額。陸上では日本実業団陸上連合が2月東京マラソンで日本新記録をつくった設楽悠太に対し、1億円の報奨金を贈った。