女子57キロ級で前大会準優勝の芳田司(22=コマツ)が昨年の雪辱を果たし、初優勝した。同級の日本選手の優勝は12年ロンドン・オリンピック(五輪)金メダルで15年大会優勝の松本薫(ベネシード)以来となり、20年東京オリンピックの代表争いで1歩リードした。

昨年のリベンジを果たした芳田は畳を下りると、両手で顔を覆った。涙が止まらなかった。「銀メダルと金メダルは全然違う。調子は上がらず苦しかったけど、勝ち切れて本当にうれしい」と安堵(あんど)した。

ヤマ場の準決勝では、日本出身の出口(カナダ)に延長40秒、得意の左足をはね上げる内股で勝負を決めた。決勝前は「もう最後」と強い気持ちで臨み、スミスデービス(英国)には終始主導権を握って合わせ技一本で完勝した。

尊敬する先輩へ勝利をつなげた。1学年上で今大会63キロ級代表の田代未来(24)に憧れて、同じ神奈川・相原中へ進学。追うように田代が所属するコマツに入社し、16年リオデジャネイロ五輪は付け人として同行した。「異様な殺気を感じた。田代先輩の戦う覚悟を感じて、私もあの舞台に立ちたいと思った」。

多くのけがに悩まされ、昨年の世界選手権後には米国スタンフォード大に短期留学した。柔道の動作で体に負担のない動きをするために「赤ちゃんの動作」などを学んだ。

4月の選抜体重別選手権は3位に終わった。「勝ちたい」気持ちが前面に出過ぎて冷静さを失った。今大会は右足首の負傷などで万全な状態ではなかったが「自分に自信をつける」をテーマに自然体で臨んだ。

今日23日は田代が出場する。試合前には田代からLINEで「深呼吸して」と背中を押された。2年後の夢舞台に向けて「一緒に優勝して、もっともっと駆けだしていきたい」。世界女王となった22歳にようやく笑顔が戻った。【峯岸佑樹】

◆芳田司(よしだ・つかさ)1995年(平7)10月5日、京都府生まれ。8歳から柔道を始める。福岡・敬愛高-コマツ。15~17年グランドスラム(GS)東京大会優勝。17年世界選手権準優勝、同ワールドマスターズ準優勝。世界ランク2位。得意技は内股。趣味は映画観賞。妹の真は18年全日本ジュニア選手権48キロ級優勝。157センチ。