錦織圭(28=日清食品)が右手首のケガから復帰した1月22日。世界ランキングは24位にまで落ちていた。4月2日には、11年10月10日の週に47位になって以来、最低の39位にまで転落した。「復帰して半年ぐらいは、(トップ10に)戻れる気配は全くなかった」。

しかし、9月の全米で4強入り。「1番、大きな自信になった」と、その後は出場した5大会すべてで、準優勝2回を含むベスト8以上の成績を収め、見事にトップ10に返り咲いた。

今年、錦織が復活を遂げることができた要因で、特筆すべきことがある。ツアー最終戦を前に、計67試合を戦い、棄権したのはたった1回しかない。4月のモンテカルロで決勝まで勝ち進み、次週のバルセロナオープン2回戦を疲労で途中棄権。その1回だけだ。

体調を崩し、3月のBNPパリバオープン(米インディアンウエルズ)を欠場した。ただ、大会に出場し、途中で棄権したのは、その1回だけ。これは、ツアーに定着した09年以降、最も少ない。ちなみに、09年以降、年別の棄権数は次の通りだ。( )内は、その年の総試合数。

▽09年(10試合)1回

▽10年(54試合)2回

▽11年(67試合)2回

▽12年(55試合)2回

▽13年(55試合)2回

▽14年(68試合)3回

▽15年(70試合)3回

▽16年(79試合)3回

▽17年(43試合)2回

▽18年(67試合)1回

これを見ると、試合数が増えると、棄権する数も増える傾向があった。しかし、今年は70試合近くも戦い、まだ1回しか棄権がない。元トップ10で、抜群の運動神経と才能がありながら、けがが多いモンフィス(フランス)と並び、ガラスの肉体とやゆされた姿はもうない。

錦織は、常に体の痛みと戦ってきた。試合数が増え疲労がたまると、腰や右手首に痛みが出るのは常だった。それが、今年は「去年の暮れに、特にトレーニングを頑張ったおかげなのかは分からないが、(以前と)体に関して言えば、すごく違いを感じている」と、自身でも驚く。

「疲れはもちろん、人間なので出る。ただ、ケガをしそうな気配だったり、痛みというのが、ほとんどでなくなってきた。特に最近は、痛みが全く出ない体になってきているのかなと思う」。これまで、体が強くなってきたと話すことはあっても、ここまで痛みを感じないと明かすのは初めてだ。

右手首のケガをしたことで、トレーニングに力を入れ、サーブのフォームも改善した。ストリングスのテンション(張る力)も緩い方向で、体にかかる負荷が減ったのかもしれない。体さえ十分なら、常に100%で戦える。錦織から大きな課題が、1つ減ったのかもしれない。(終わり)

 

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