テニスの今季4大大会初戦、全豪オープン(メルボルン)が14日、開幕した。日本男子のエースで世界9位の錦織圭(29=日清食品)は、悲願の4大大会初優勝を目指す。昨年まで6年間、専属トレーナーを務めた中尾公一氏(43)が、錦織の身体について語った。

  ◇  ◇

18年末を持って、中尾氏は、6年間努めた錦織の専属トレーナーを終えた。簡単に言えば、身体を鍛えるトレーニングの部分は11年末から理学療法士のロバート・オオハシ氏が担当。中尾氏は、ツアーに帯同し、ケガや故障を防ぐケア・トレーニングの部分を担当してきた。

帯同トレーナーの日々は多忙だ。例えば、試合がある日は、ストレッチやウオーミングアップ以外にも、食事の準備や試合中の飲み物の準備も、中尾氏の役割だった。試合中は、試合展開よりも、錦織の動きに注目し、問題点がないか探った。試合が終われば、リカバリー、クールダウン、トリートメントと、身体ケアが山積みだ。

中尾氏は、最初、錦織を見たとき「まだ鍛える余地はある」と感じていた。そこで、オオハシ氏に「殺すぐらい鍛えてほしい」と伝えた。「彼の身体は普通です。特別なことはない」。その身体をけがなく、年間70試合ほど高いレベルで戦わせるには、厳しいトレーニングと日ごろのケアが必須となる。

ただ、中尾氏が驚いたことがある。「教えたことが、すぐにできた。これはすごいこと」。例えば、大きなバランスボールの上に、錦織は、最初、ひざ立ちができなかった。「それが、あっという間にできるようになった」という。試合の中でも修正能力が高い錦織だが、トレーニングの部分でも、その能力は発揮されていた。

錦織を14年全米で日本人初の4大大会準優勝に導き、17年は右手首の腱(けん)の脱臼という、トレーナーとしての試練を味わった。19年は“新生”錦織の飛躍の年になるが、「今までのケガを再発させないこと。そして加齢に負けない身体維持をすること」が課題だという。

トレーナーという身体をつかさどる仕事でも、この6年間で感じたことがある。「勝つためには心技体が必要。どれが欠けてもだめで、トップに行けば行くほどメンタルでの争いになる」。勝利には体を鍛えるだけではだめだということだ。

技術や戦術など、プレーの部分には、直接、関知はしない。しかし、それを支える根の部分が身体だ。「すべての優勝。全米準優勝、五輪のメダルの瞬間」。それが、6年間で、中尾氏が錦織を支えた歓喜の瞬間だった。

◆WOWOW放送 全豪オープン。1月14~27日。連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。