2020年東京五輪・パラリンピック招致を巡る贈賄疑惑で、フランス司法当局から容疑者として捜査を開始された元招致委員会理事長で日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)が15日、都内で会見を行った。一方的に書面を読み上げる形式で質問は受け付けず、わずか7分で終了。報道陣から激しい抗議が飛び交うなど、会見場は一時騒然となった。

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竹田氏はこれまでどおり、開催都市への投票権を持つ国際オリンピック委員会(IOC)委員の買収疑惑について潔白を主張した。だが、その根拠は16年8月にJOCの調査チームが取りまとめた報告書の内容をなぞるだけのものだった。

疑惑は、招致委がシンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディングス(BT)社」と契約し送金した計280万シンガポールドル(約2億2000万円)の一部が当時、IOC委員だったラミン・ディアク前国際陸連会長(セネガル)の息子、パパマッサタ・ディアク氏に渡ったとされる。

竹田氏は「契約は正式な手続きだった」と主張。現場の担当者が起案した稟議(りんぎ)書に順次、上司が承認後、最後に竹田氏が押印した経緯に「私はこの契約についていかなる意思決定プロセスに関与していない。承認手続きを疑うべき理由はない」と強調した。BT社とディアク親子の関係も「知らなかった」と話した。

だが、質疑を受け付けず、2年半前の報告書の内容を繰り返しただけの会見は、逆に批判を集めた。集まった国内外約70社140人の報道陣から批判の声が相次いだ。

12日に竹田氏の会見が設定された当初は、通常通りの会見形式で案内された。しかし、捜査中との理由から質疑を取りやめ、報道各社に連絡が入ったのはこの日未明の午前2時過ぎだった。

報道陣は説明不足だとし会見後、質疑応答を要請したが竹田氏が広報を通じて「顧問弁護士と関係者と相談し、捜査への影響があるので控えたい」とコメントし、実現しなかった。【三須一紀】

 

○…JOC竹田会長の会見を受け、東京五輪に関連する各団体が反応した。大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「組織委は招致決定後に設立されており招致活動の詳細を知り得る立場にない」とコメント。竹田氏は組織委の副会長職も務めているが現時点で進退の話は出ていない。スポーツ庁の鈴木大地長官は、自身も招致委の理事だったが疑惑について「我々は地道に愚直にやっていたので残念だ。こういう大きな動きは知らなかった」と語った。菅義偉官房長官は会見で、竹田氏が質疑を受け付けなかったことについて「(疑念を晴らす)具体的な方法はご自身が判断されるだろう」と述べた。

 

<竹田会長の今後>

フランス当局は現在、予審判事と呼ばれる裁判官が捜査を開始した。あらゆる証拠調べができ、勾留・保釈等の権限も有する。昨年12月の竹田氏への事情聴取も、同判事が実施した。捜査の結果、公判が必要と判断すると次に、3人の裁判官が書面審理で審査する。そこで犯罪の嫌疑があると判断すると公判が決定し以後、被告人となる。

司法省の統計によると、予審が行われた事件で17年に裁判を開かない「免訴」となったのは全体の20%という。公判になった場合、第1審の無罪率は重罪で約6%とされている。一方で予審開始から終了までの平均期間は約2年8カ月で、免訴となったケースでは平均約3年3カ月を要している。JOCは6~7月の予定で役員改選を控え、関係者の間では、東京五輪までIOC委員の任期延長が決まっている竹田会長の11選が有力視されていた。疑惑を抱えたままの続投には、疑問の声が上がりかねず、去就問題が浮上する可能性も出てきた。