【メルボルン(オーストラリア)=吉松忠弘】日本テニス界の歴史がまた動いた。世界4位の大坂なおみ(21=日清食品)が日本男女を通じて史上初めて、全豪シングルス決勝進出の快挙を達成した。同8位のカロリナ・プリスコバ(チェコ)に6-2、4-6、6-4の1時間53分のフルセットで勝ち、28日発表予定の最新世界ランキングで2位以上が確定。男女を通じて李梛(中国)と並ぶアジア最高位となった。26日に予定されている決勝で世界1位の座をかけ、同6位のペトラ・クビトバ(チェコ)と対戦する。

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マッチポイント。大坂の時速179キロのサーブが火を噴いた。誰もがエースを確信した。勝利を信じてわき上がる歓声で、線審の「フォールト」の声はかき消された。一瞬「えっ?」と大坂の表情が緊張した。そして、ビデオ判定を即座に要求した。

スクリーンに描かれる自分のサーブの軌道を見ながら、ラケットを支えに手を合わせて祈った。「入れ~。全パワーを送ったの」。その願いは天に通じた。ほんのわずか数センチ、球の右端がラインにかかっていた。判定は「イン」。大坂は両手を無邪気に振り上げ、笑顔でスキップだ。

最後はわずか数センチで、再び日本テニス界の歴史がつくられた。昨年の9月の全米に続き、4大大会で決勝に進出。全豪のシングルスでは日本選手初の決勝進出だ。アジア最高位と並ぶ2位以上も確定で、決勝で勝てば世界1位が決まる。「まずは優勝するのが先。でも、(世界1位は)本当にすごいことよね」。

この日は、最高の滑り出しを見せた。第1セット。プリスコバ相手に16本の決定打をたたき込み、パワーで完全にねじ伏せた。加えて凡ミスは相手よりわずか1本多い9本に抑え、日本テニス協会の土橋強化本部長は「ほぼ完璧」と絶賛した。

しかし、簡単に相手は引き下がらない。ミスを抑え、辛抱強くつなぎ、大坂から逆にミスを引き出した。第1サーブの確率が落ちると、第2サーブを狙われた。「サーブを打つのが怖くなった」。第2セットを落とし最終セットも0-2となるピンチが3度。「120%で挑んだ」と、それを乗りきると勝利にひた走った。第1セットを奪うと、これでツアー本戦予選、フェド杯を合わせ66連勝となった。

この日、真夏のメルボルンは気温が最高40度を超えた。全豪特有の酷暑対策規則で、屋根がない屋外コートはすべてプレーが中断。センターコートは開閉式の屋根が閉められ室内となった。環境が変わったが「本当は屋根が開いていた方が良かったわ。私は暑いの大好きだもの」。そして、こう続けた。「それこそ、私が輝く時だわ」。その時は、輝く太陽の下、26日の決勝に必ずやってくる。