体操の世界選手権は13日、ドイツのシュツットガルトで閉幕し、日本は男子の銅メダル2つに終わった。

男子は内村航平(リンガーハット)、女子は村上茉愛(日体ク)らこれまでの中心選手を欠いた中、昨年に続いて金メダルなしとなった。大会を、アテネ五輪金メダリストの米田功氏(42)が総括した。

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アインシュタインに「同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という」という名言があります。男子は団体総合で2年連続の銅メダル。その言葉を思い出しました。このままでは、来年も同じ結果になる。金メダルを目指すのであれば、根本的に何かを変えていかないといけない。

今大会、日本の中で最も評価されたのは初出場の橋本大輝選手でした。予選のあん馬で出来栄えを示すEスコアは8・833点。旋回の正確さなどに高得点が出ました。ただ、これが国内の演技だったらどうか。得点は少し抑えられるかもしれません。

国内外の評価の差は、国内大会におけるEスコアの算出方法によります。1人だけ突出した高得点を出したり、その逆もほぼありません。決定点から極度に離れるとペナルティーを受け、思い切った点を出しにくい。無名に近い選手が減点が少ない演技をしても、高得点を与えにくい。逆に日本代表という肩書が保険となり得点が高くなるケースもある。結果、世界と日本の採点にズレが生じます。世界の採点の流れは、きっちりした演技に点を出します。ロシア、中国はそう。日本のような、流れるような演技がリオまでは評価されてきましたが、今は違う。着地でも、きちんと丁寧に準備した1本を決めることが必要です。この傾向は来年も変わらないでしょう。

翻って、国内がそうではない。すると世界では評価されるだろう選手に日が当たらなくなる。その選手はEで評価されないため、難度を示すDスコアを上げるしかない。すると、本来の正確さが失われる。悪循環です。ビルに例えれば、しっかりとした土台が1階にあって、高層ビルは建ちます。土台がなく、高さを積み上げたらグラグラするのは当然ですが、国内ではEスコアの評価が世界基準とずれていることで、不安定な高層ビルの価値が高い場合がある。

Dスコアの点数は上位3カ国に違いはありません。今大会を見て、やはりEスコアが勝負を分けると痛感しました。現状の認識を日本に持ち帰り、審判部も含めて日本体操界全体で抜本的に考える時ではないでしょうか。もはや日本の体操は世界のスタンダードではありません。その事実から、あらためて日本基準を問い直す時です。