【トリノ(イタリア)4日=佐々木隆史】憧れの舞台で、ついに大技を解禁した。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ上位6人、6組で争われるGPファイナルに出場する男子の羽生結弦(24=ANA)が公式練習を行い、17年11月のNHK杯で負傷して以降、封印してきた4回転ルッツを着氷した。憧れのエフゲニー・プルシェンコ氏(ロシア)が金メダルを獲得した06年トリノ五輪と同じパラベラ競技場で、男女通じて最多となる5度目の優勝を目指す。

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練習開始から約15分後、自身の曲かけ練習の前に羽生がついに舞った。鮮やかに着氷したのは、2年間封印してきた4回転ルッツ。一呼吸遅れてから、会場中では歓声が湧き起こった。40分間の練習で跳んだのはその1本だけ。それでもループ、トーループ、サルコーの3種類の4回転ジャンプを跳ぶなど、順調な調整ぶりを見せた。

憧れの大舞台での成功だ。パラベラ競技場は自身が11歳の時に行われたトリノ五輪と同じ舞台。「会場自体に大きなエネルギーがある。自分がすごくスケートにのめり込んでいた時期に五輪があった場所。いろんな思い出がある。勝手にですけど、力をもらって演技したいなと思っていた」と特別な感情を抱きながらの練習だった。会場内にあったトリノ五輪のマークを写真に撮るなど、少年のように無邪気に笑った。

憧れの人を、この地で超える。優勝回数4度はプルシェンコ氏と並んで最多タイ。昨季の再演となるフリー「Origin」は、同氏がかつて演じた「ニジンスキーに捧ぐ」をオマージュしたものだ。そのプログラムに、最高難度の4回転ルッツ投入をもくろむ。「感触はよかった。後はショートプログラムをやってみての体力次第」と、現段階では肯定も否定もせず。「スケート自体がすごくワクワクした。すごく楽しいなって思っていました」とリンクの感触は最高だ。

今回は、3月の世界選手権で敗れたネーサン・チェン(米国)と一騎打ちとなる。GP2戦ともに合計点300点超えを果たしているだけに、4回転ルッツを成功すればチェンの歴代最高合計点を超えての優勝の可能性は十分にある。「自分の中で集中しきれた。これをやると決めたことがしっかりできた」と、この日はライバルを前にしても動揺などなかった。

フリーが行われる7日は、自身25度目の誕生日。「心の底から『やったー』と思える誕生日になっていれば、自ずと結果もついてくる」と語った。新たな歴史の1ページを開くために、まずは5日(日本時間6日朝)のショートプログラム(SP)で完璧な「秋によせて」を演じきる。

◆GPファイナルの優勝回数 男子の最多は羽生結弦とプルシェンコ(ロシア)の4回。羽生は13年から4連覇、プルシェンコは99、00、02、04年に優勝している。次いでヤグディン(ロシア)ランビエール(スイス)チャン(カナダ)チェン(米国)の2度。女子はスルツカヤ(ロシア)と浅田真央の4度が最多。