フィギュアスケート男子の高橋大輔(33=関大KFSC)が18日、シングル最後の全日本選手権(19日開幕、東京・国立代々木競技場)に向けて会場で公式練習に臨んだ。羽生結弦(ANA)、宇野昌磨(トヨタ自動車)らとの競演をイメージし「無謀に挑戦している」と表現。年明けからアイスダンスに転向する先駆者が、その生き様を演技に込める。

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初めて出た全日本選手権から、18年の歳月が流れた。午後3時15分。後輩5人と立ったリンクで、高橋はじっくりと体を温めた。ショートプログラム(SP)曲「ザ・フェニックス」をかけた通しでも、運動量は決して多くない。それでも代名詞のステップが始まれば、全身をフルに使い、唯一無二の空気感を作った。

「スケートを早いタイミングでやめるのではなく、長く続けることで、経験できることもたくさんある。自分自身は33(歳)だけれど『33までできるんだ』と思ってもらえれば、それだけでいいかなと思います」

18年間で立場は変わった。5度の優勝で追われる立場を経験し、14年の引退から4年間はリンクの外で見守った。昨季の現役復帰後、先輩選手は見当たらなくなった。今大会は羽生や宇野、ジュニアグランプリ(GP)ファイナルを制した15歳佐藤駿らと競演する。

「今の状況でどういう立ち位置、成績、順位に食い込んでいけるかを楽しみにしている。『無謀に挑戦している』という感じです」

11月の西日本選手権は左足首の負傷で欠場。現状を「足は大丈夫だったけれど、調整はあまりうまくいっていない」と正直に明かす。それでもこの日の終盤には4回転トーループに成功。20年東京五輪に向けて改修された、きらびやかな会場で練習を楽しみ「今日は体が動いていたので『記念に(4回転を)跳んでやろう』という感じで。明日からはやらないと思います」とほほえんだ。SPは20日。4回転を跳ばなくても、33歳にしか見せられない滑りがある。【松本航】