アイスダンスのFDで、小松原美里(27=倉敷FSC)ティム・コレト組(28=米国)が連覇した。リズムダンス首位で迎えたFD。私生活でも夫婦の2人は息のあった演技を披露。FD99・52点で合計163・31点で制した。夏に頭を負傷した小松原を、コレトが支えた。米国出身のコレトは10月に日本国籍取得の手続きをスタート。来年から新ペアを結成する高橋大輔(33)村元哉中(26)組との競演を心待ちにした。

   ◇   ◇   ◇

ゆっくりと寄り添って、抱き合った。緑の衣装に身を包んだ2人がお互いをいたわり合う。コレトが左手を優しく小松原の頭に置いた。小松原は「ここに来るまでたくさんの壁、つらいことがあった。演技ができていい1日でした」と目に涙を浮かべた。

小松原は夏、頭を2度強打。競技どころか命の危険もあった。11月の中国杯ではフラッシュバックに襲われた。何もないところでいきなり鼻の奥で血のにおいがよみがえる。コレトは妻の回復を待つ間、リンクで1人滑った。「大会に合わせるのが精いっぱいだった。スタミナがついてない。今回は50%だった」と小松原。それでもコレトは「少しの失敗はあったが、幸せです」と連覇を喜んだ。

来季は、高橋、村元組がアイスダンスに転向する。小松原は高橋と同郷の岡山・倉敷市出身。初めて氷上に立った時、同じリンクに高橋もいた。陸上トレーニングは高橋の父親に教えてもらったという。「新しく知り合った人に『アイスダンスって高橋君がやろうとしているやつだよね』と言われる。アイスダンスを知っていることにびっくり。うれしいことです」。

コレトは米国にいた子どものころ、高橋の革新的なヒップホップ調「白鳥の湖」に衝撃を受けた。「かっこよかった。氷の上であんなことができるなんて。大輔さんになりたいと思った」。2人は同じ大会に出ることを心待ちにしている。

コレトは、岡山の語学学校で日本語を学んでおり、取材エリアでの質問はすべて日本語で答える。10月からは日本国籍取得の手続きに入った。順調にいけば、来年中に取得予定。小松原は、高橋、村元組が参戦する来季について「ベストを尽くすことは変わらないです。いい燃料になる」と切磋琢磨(せっさたくま)を誓っていた。【益田一弘】

◆ティム・コレト 1991年6月17日、米コロラド州生まれ。シングル時代は、全米ジュニア選手権に出場した。16年に小松原とカップルを結成して、日本の所属として活動。身長187センチ。特技は我慢、趣味は小説を書く、ゲーム。

◆小松原美里(こまつばら・みさと)1992年(平4)7月28日生まれ、岡山・倉敷市出身。16年5月にコレトとカップルを結成して、17年に結婚。全日本は18年初優勝。19年3月の世界選手権は日本代表で出場して21位。身長は161センチ。特技は外国語習得。趣味は読書、DIY、ネイル。