桐蔭学園(神奈川)が御所(ごせ)実(奈良)を23-14で下し、東福岡と両校優勝した10年度の第90回大会以来2度目、令和初の花園を制した。単独では初優勝。前半は3-14とリードされたが、後半一気に逆転。最後はSO伊藤大祐主将(3年)のドロップゴールで突き放した。昨年のワールドカップ(W杯)日本大会で活躍した松島幸太朗(26=サントリー)らを輩出する関東の強豪は、昨年の選抜大会、7人制と合わせて「3冠」を達成した。御所実は、4度目の決勝でも涙をのんだ。

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ロスタイムが1分過ぎ、ボールを受けた桐蔭学園のSO伊藤主将は勝利を確信し、力いっぱい蹴り出した。ノーサイドの笛を聞き、跳び上がって喜んだ。「取ってないタイトルだったので、うれしい」。初の単独Vに笑顔を見せた。試合を決めたのも伊藤だった。20-14の後半27分。「9点差になれば勝ちが見える」とパスを受け、鮮やかにドロップゴールを決めた。花園では競った試合が増えると想定。“飛び道具”を、ひそかに磨いていた。

自慢の堅守も光った。前半から、持ち味のグッと1歩前に出るタックルで突破を封じた。リードされて折り返したが、後半相手の足が止まるという読み通り、無失点に抑えて3トライで逆転。プロップ床田は「前半取られるのは想定内。後半は自分たちの継続ラグビーができた」と笑った。

花園期間中の“裏合宿”で鍛え上げたフィジカルとスタミナで、西の強豪を次々となぎ倒した。大会中、メンバー外の選手は練習会場の脇でランニングや基礎練習を行う。1年生を中心としたそれ以外の選手は、毎日1周5キロの大阪城の周りをひたすら走る。決勝まで勝ち上がれば、走行距離は1人計70キロ超に。練習を見ることすらできない。福本コーチは「応援に来ているのではない。単なる強化合宿。それに試合がついているだけ」と話す。この積み重ねで「いつか花園の舞台でやりたい」という強い思いと、勝利への意欲をかき立ててきた。

Vメンバーのフランカー久松は1年で大阪城の“地獄”を、2年で練習会場の脇を経験。「スタミナやフィジカルに自信がついた」と3年でレギュラーをつかんだ。1年時に練習会場の脇にいたCTB渡辺は「あの練習があるから今がある」と口にした。どんな有望選手も、パスやタックルの基礎から徹底する桐蔭学園のラグビーが、ついに花開いた。

過去6度の決勝で、両校優勝はあるが、勝ったことはなかった。前日6日のミーティングで金子コーチから「そろそろ決着つけようや」と声を掛けられ、勝ち切った。決着をつけた令和初の王者は「3冠」で、W杯で盛り上がった19年度の高校ラグビーを締めた。【松熊洋介】