1月に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれて負傷したバドミントン男子シングルスの桃田賢斗(25)が、右目の眼窩(がんか)底骨折で全治3カ月と診断され、8日に手術を受けた。所属先のNTT東日本が発表した。桃田は4日の代表合宿中にシャトルが二重に見えるなど異変を訴えたという。東京オリンピック(五輪)出場をほぼ確実にしているが、回復次第では復帰2カ月で本番を迎える可能性もあり、悲願の金メダルへまたも試練が訪れた。

  ◇   ◇   ◇  

復帰に向け再スタートを切った日本のエース桃田が、またも不運に見舞われた。1月13日の交通事故で全身打撲などのケガを負った。運転手が死亡する大事故だったが、事故直後に現地の病院で顎、眉間、唇の裂傷、全身打撲と診断された。帰国後、入院して全身の精密検査を受け、1度は「異常なし」と診断されていた。順調に復帰へ向かっているとみられていた。

所属先によると帰国後、目がかすむ症状が多少見られたが、生活に支障はなく、体も順調に回復してきたことから、今月3日からの合宿に参加。静養期間中はラケットを握っておらず、4日の練習で事故後初めて手にすると「シャトルがぶれる」と視界の異常を訴えた。5日に合宿を離脱。7日に目に特化した検査を受け眼窩底骨折が判明。骨折を知った当初は動揺する様子を見せていたという。通常、CT検査で比較的簡単に判明するものだという。なぜ1カ月近くを要したのかは不明だが、8日に手術を受けた。

術後の経過は順調で、1週間ほど入院する予定。状態が良ければ、その後1週間ほどで軽い運動ができる可能性もあるというが、全治は3カ月。開会式翌日の7月25日から戦いがスタートする五輪まで、時間はない。復帰戦に予定していた3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)の参加も取りやめになった。日本代表の朴柱奉監督は日本協会を通じ「驚いています。結果を所属チームから聞いてひと安心しました。焦らず回復に専念してほしい」とエールを送った。

東京五輪出場枠をかけた選考レースで、現在トップに立つ桃田は五輪出場を確実にしている。約3カ月後の男子トマス杯(5月16日開幕・デンマーク)で復帰できたとしても、五輪までの実戦の場は限られ、試合勘を養えるかどうか、不安は大きい。

全治3カ月だとして、復帰後、五輪までの実質的な準備期間は2カ月ほど。4年前は、自ら犯した賭博問題でリオデジャネイロ五輪出場を逃した。今回は不慮の事故ながら、1度は再スタートを切ったはずだった“金に最も近い男”に、またも試練が訪れた。