フィギュアスケートの14年ソチ五輪代表で、現在は研究者として競技に関わる町田樹さん(30)が、“業界初”の「リモートワークショップ」を行う。

「フィギュアスケーターのためのバレエ入門」と題し、12日からオンライン配信を開始する企画を発案した。副題は『「表現」熟達のための公開ワークショップ』とし、バレエの技術をいかに氷上に応用していくかを、講義や実演で伝える。今回は18年でプロスケーターを引退後初めてリンクでも滑り、指導する。フィギュア界に新たな動きを生む意図について聞いた。

-企画された動機から教えて下さい

「新型コロナウイルスが影響してますが、緊急事態宣言が4月に出され、都内のスケートリンクはいまも一般営業ができていません。限られた選手のクラス、会員にしか開放されておらず、その選手たちも時間が限られています。その現状を見て、何かできないかなと模索してきた中で、オンラインに至りました。リンクでの練習ができない、少なくなる中で、氷上でトレーニングすることだけが練習ではないと。活動が制限される中でも考え方によってはいろいろな練習ができる。大変な状況でもやれることはあるという1つを見せたくて、企画しました。ルーティンが乱れたり制限されているからこそ、新しい知識、ノウハウを勉強してみませんか、ということです」。

-バレエを選ばれた理由は

「フィギュアスケートはジャクソン・ヘインズというニューヨーク出身のバレエダンサーが創った文化なんです。ということは、そのルーツにはバレエの文化が認められる。だからこそ、スケーターは意識的にも無意識的にもバレエを応用した演技が多いわけです。競技のルーツから考えると、相性が良いし、歴史的にも深くつながってきた。だからこそ、ワークショップを通じて考えてみようと。フィギュアに応用可能なバレエのスキル、知識を提供し、見る方もこういうところにバレエが使われているんだという学びの一環とも思っています。する方、見る方、全員に対して楽しめる内容にしました。選手、スケーター以外でも面白く、身になるコンテンツになってます」。

-これまでのバレエとの関わりは

「選手時代も取り組んでいましたし、引退後の15年からは元東京バレエ団プリンシパルの高岸直樹さんに師事し、日本のトップダンサーに学んでいます。フィギュアと両方の技術、知識をある程度身につけられていると思っています」。

-配信される内容について教えて下さい

「3つのパートに分かれていて、第1パートは私のレクチャーです。これは、プロジェクトを立ち上げた趣旨と、フィギュアとバレエの歴史的、技術的関係性、なぜバレエというジャンルを選んだかの経緯ですね。フィギュアにおける表現力は何かも伝える講義形式で、50分ほどです。第2パートはバレエのワークショップです。スタジオでのレッスンで実践しながら学んでいく。これが1時間45分くらいあります。第3パートが氷上でのワークショップです。フロアでやったバレエの技術をいかに応用できるかを伝えます。合計で3時間半くらいになります」。

-ご自身も滑られますね

「私も踊りました。スケートで一作演じました。ただ、それを目玉にするのではありません。出演者でプロスケーターの瀬尾茜さん、松村成さん、現役で強化指定選手の永井優香さん、ジュニアの清野桃葉さんの4人に集まってもらい、最後に私が新たに振り付けた作品を4人で踊り継いでもらいます。曲はショパンの「別れの曲」で3分30秒ほどの短い曲ですね。4つのパートに分けて4人がリレー形式で演じる映像作品です。その作品のデモンストレーションという形で私も演じてます。18年に引退して、約2年間で5時間くらいしか滑ってなかったので大変ではありました。ただ、ジャンプなどは跳べなくなってますが、スケーティングはなんとかなりましたね」。

-改めてこの配信の意義について

「14年に国際スケート連盟(ISU)がボーカル入り曲を解禁してから、使われる曲のジャンルは多様化しています。今回はバレエですが、音楽によっては、ジャズ、タンゴなど別のダンスを学ばないといけなくなるかもしれません。今回はバレエにフォーカスしてますが、一方でフィギュアスケーターはジャンプ、ステップ、スピンなどフィギュアの技術を学ぶのはもちろんのこと、それだけでなく、ダンスの学習、実践はスキルを上げるために大事だと気付いてほしい。そういう思いがあってやっています」。

配信は10月12日まで。視聴チケットは3800円(税込)で、イープラス(https://eplus.jp/sf/detail/3304200002?P6=001&P1=0402&P59=1)で購入できる。