世界9位の大坂なおみ(22=日清食品)が、アジア選手として史上最多3度目となる4大大会シングルス優勝の快挙を成し遂げた。

元世界女王で、同27位のビクトリア・アザレンカ(31=ベラルーシ)を1-6、6-3、6-3で下し、全米は18年優勝以来2年ぶり、4大大会では19年全豪以来の優勝。2回で李娜(中国)と並んでいたアジア選手の4大大会シングルス優勝回数を更新し、単独最多となった。また、14日発表予定の最新世界ランキングで3位に復帰する。

第1セットは相手の左右に振るショットに苦しむなど1-6と落としたが、第2セットから本来の姿を取り戻した。2-3とリードされた展開から4ゲームを連取し、セットカウント1-1のタイに。このセットだけでエースを5本取るなどパワフルなサーブが光った。

そして迎えた第3セット。第4ゲームをブレークするなど優勢に進める。アザレンカの粘りに遭うも、第8ゲームを一進一退の攻防からブレーク。そして第9ゲーム、最後はアザレンカのバックがネットにかかり、白熱した大一番を制した。大坂はコートに寝転がり、勝利の喜びに浸った。

「決勝は楽しみというより怖い感じだった。(アザレンカは)本当に強い相手だった。試合が終わった後、崩れ落ちる時はあるけど、けがしたくなかったので安全に寝転んだ」と、安堵(あんど)した表情で振り返った。

大坂が、3度、歴史に名を刻んだ。アジアでテニスの女神として知られた李娜を抜き、男女を通じて最多の4大大会優勝だ。19年全豪優勝で、アジア男女初の世界1位となったことに続く快挙で、大坂はアジアで最も偉大な選手となった。

大坂が、強打と安定性を融合した理想のスタイルで、アザレンカを突き放した。どれだけ打っても、決して軸が崩れず、凡ミスが減ったのが、今回の大坂だ。また、課題だった精神面も「いつも積極的にいられる」とまったく乱れない。この日もその強さが、アザレンカの粘りを打ち破った。アザレンカは、大坂が4大大会本戦で初めて敗れた相手だった。16年全豪で予選を勝ち上がり4大大会本戦デビュー。その後も、破竹の快進撃で、3回戦でいきなりセンターコートに入った。その相手がアザレンカだった。全く歯が立たず、わずか2ゲームしか奪えなかった。「負けて良かった。学ぶことが多かった」と、大きな経験を手にした。

アザレンカ戦からスタートしたとも言える大坂の4大大会人生。あれから4年を経過して、全米決勝の舞台で勝利することで、その恩を返したことになる。「山あり谷ありの経験から、多くのことを学んで成長できたから、私はここにいる」。

被害に遭った黒人の名前入りの人種差別に抗議するマスクも、用意した7枚を、すべて披露した。1回戦勝利後「決勝に進むため、7枚を用意した。7人の数は少ないが、すべてを見せたいので頑張りたい」と話していた。その言葉を見事に実践して見せた。

今後については、次週のイタリア国際(ローマ)は欠場を決めたが、27日開幕の4大大会・全仏オープン(パリ)まで苦手とするクレーの大会が続く。しかし現在見せているテニスなら、粘りと忍耐が鍵となるクレーも、十分に克服してくれる可能性は高そうだ。【吉松忠弘】