羽生結弦の演技でスピンが「無価値」で0点と判定された。5要素目の「足を替えて座るスピン」が認定されなかったが、その理由を10年バンクーバーオリンピック(五輪)男子8位の小塚崇彦氏(31)に推測してもらった。

(1)スピン前の動作がスピンと取られた(2)1つの姿勢で2回転以上しなかった。2つの可能性がある。【取材・構成=阿部健吾】

小塚氏 まず前提として、なぜ0点かは本人とジャッジしか知り得ません。公開がされないからです。僕も現役時代はよくジャッジに直接聞きに行っていました。それで理由が分かります。ですので、このスピンも可能性を探ります。

焦点は演技後半に入り、トリプルアクセルを決めた後の場面。滑らかな着氷の余韻を生かすように、動作に入ったスピンだった。これが基礎点0点となった。

小塚氏 1つ目として、その直前の動きが座るスピンの動きと認定され、その後のスピンが、失敗したスピンの時間の埋め合わせと取られたかもしれません。

羽生はしゃがんで片足でのターン(ツイズル)をしゃがんだ姿勢で2回行い、起き上がってからスピンに入った。このステップが今季から導入された「2回転を満たす基本姿勢が1つもないスピンは、レベルが与えられず無価値となる」に抵触した可能性。

2つ目の可能性が回転不足。

小塚氏 スピンの最中に姿勢を変えますが、単一姿勢では2回転以上が求められます。これが1・5回転などと判断された。そして、姿勢が高かったことで、片足で座るポジションがカウントされず、無価値となった可能性で、こちらの方が有力です。いずれにしても本人が確認し、原因がわかれば今後は大丈夫。SPでは同時に、さすがの場面もありました。

挙げたのは4回転-3回転の連続トーループ。

小塚氏 今日は着氷で後ろ体重になってかかとがひっかかり、乱れる(ステップアウト)選手が多かったです。全日本の気負いなども影響したかと思います。羽生選手も4回転で前傾姿勢になり、そのブレを直すために3回転が後ろ体重になりました。それでも、氷に着く足と逆の足(フリーレッグ)をうまく使い、姿勢を保ちました。経験と技術を感じました。フリーではどんな演技を披露してくれるか、楽しみです。