スポーツ庁は15日、都内でラグビーの振興に関する関係者会議を開き、東京・外苑前に建設する新秩父宮ラグビー場を全面屋根付きのアリーナ型にする検討を進めた。

昨年9月に続いて3回目で、萩生田光一文科相、スポーツ庁の室伏広治長官、JSC芦立訓理事長、日本ラグビー協会の森重隆会長らが出席。「神宮外苑地区市街地再開発事業における秩父宮ラグビー場の移転整備」に関して、日本協会からの要望も勘案し、以下の6点の基本的考え方をまとめた(主な要素を抜粋)。

<1>「秩父宮」の名称を引き継ぐ。国際統括団体ワールドラグビーが求める国際大会の基準を踏まえて整備する

<2>快適なラグビー施設にするとともに、他のスポーツ競技や各種イベントなど、さまざまな用途でも使用できるよう全天候型で整備する

<3>神宮外苑地区再開発事業のスケジュール順守を前提に、全天候型への見直しに伴う秩父宮ラグビー場の閉鎖期間が最小限となるよう整備を進める

<4>スポーツを通じた共生社会の実現

<5>全天候型への見直しに伴う財源の確保などのため、民間のノウハウを最大限活用できるよう、施設整備および運営に民間活力を活用した事業方式(PFI事業/BT+コンセッション方式)で整備する

<6>「観るスポーツ」の価値を最大化するため、ICTの活用等で高付加価値のサービスを提供できるスマートスタジアムにする

会議の最後、萩生田文科相からスポーツ庁とJSCへ具体的な検討に着手するよう指示があり、今後は都市計画を東京都へ申請。審議会での議論や地権者との調整を進めていく。

全天候型になることは決定していたが、屋根が完全密閉型か、メットライフドーム(プロ野球西武の本拠)のように隙間があるタイプかは未定だった。今回、完全密閉型になることが決まり、基本的考えの<2>を満たすだけでなく「緊急時の避難先としても、吹き抜けのある屋根ではなく密閉式の方が効果的」とスポーツ庁の今泉課長は説明した。屋根は、フランス・パリ郊外の「Uアリーナ」というラグビー場をモデルにしているという。

事業費は、屋根の整備が決まったことで当初の200億円を大幅に上回る見通し。完成は、神宮外苑の建て替えの連鎖によって現時点で2026年から2033年まで延びている上、さらなる変動もありそうで「十数年」(同課長)を要する見込みだ。

場所は、神宮第2球場がある敷地に移る。スタジアム南側が既存の神宮球場の左翼席と重なるため、第1期工事では南側をオープンにした、スタンドが3方向のスタジアムとして整備する。新神宮が現秩父宮の位置へ移った後、現神宮が取り壊された時点で新秩父宮の南側の最終追加工事に入り、完全密閉型のラグビー専用球技場が完成する。当面の収容人数は約2万人になりそうで、ピッチは天然芝から人工芝に変えて多用途に対応する。【木下淳】