フィギュアスケート世界選手権(ストックホルム)で銅メダルの羽生結弦(26=ANA)が28日、一夜明けのオンライン取材に現地から応じた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年ぶりの世界一決定戦。25日のショートプログラム(SP)は首位発進もフリー4位の総合3位となった大会を振り返り、22年北京オリンピック(五輪)や目指す前人未到のクワッドアクセル(4回転半)成功への思いを激白した。【木下淳】

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-4年ぶり3度目の優勝を逃して3位の原因、心当たりは。ぜんそくの発作が出たとの報道もあったが

羽生 発作はフリー後にちょっと感じたかな、終わった後に苦しかったかな、くらい。会場入りが遅れた理由ではない。体調も問題ないです。6分間練習も影響はなかった。点数ほど大きなミスではなかった。ほんのちょっとずつズレていたけど、やり切れたかな。

-北京五輪への思いは

羽生 うーん。4回転半を目指す状況の中に五輪があれば、考えます。ただ、最終目標は五輪で金メダルではなく4回転半を成功させること。世界の情勢を見ながら、自分の体とか考慮しながら考えていきたい。その道の上にあれば可能性はあるかな、という感じ。

-現役続行を決めたのはいつか

羽生 やめる、やめないじゃなくて、4回転半を跳べないと一生、満足できない。一時期、年だな、体が動かなくなったなと思う日々はあったけど、まだまだ成長できる。僕の場合は過去の栄光と比較される。保てているかと言われれば難しいけれど、確実にレベルアップし、うまくなっている。平昌よりもヘルシンキ(フリーで当時世界最高点を出した17年世界選手権)よりも絶対にうまくなっている。限界の感じはない。

-今後の拠点は

羽生 ブライアン(オーサー・コーチ)からメールがきて『クリケット(カナダ・トロントの練習場)で教える日を楽しみにしている』と。ただ、自分の中で確証としてカナダに戻ると言い切れない部分がある。4回転半の練習を1人でやっていて分かってきた。複数人で練習した場合も4回転半のコース上に人がいれば気が散ってしまうこともある。1人はそれがない。曲かけも自由度が高い。あとは体の状態。しばらく、トロントでケアしてもらっている先生に診てもらえていない。足、腰、首にガタがきてる。なので一概にカナダ、日本とは言えない。

-チェン選手との差、距離感は

羽生 特に何も感じてないです、はっきり言って。あの高難度を全て成功させるのは並大抵ではない。彼の努力のたまもの。ただ、今は故郷(宮城)が大変なことになっている。まず感染しないことが第1目標。対ネーサンみたいな分かりやすい構図じゃなく、対自分より対コロナ。何よりホッとしたのが3枠を取れたこと。全日本王者として使命感がかなり強くあった。

-先ほど「五輪で金より4回転半」と。決めてしまったらやめてしまうのか

羽生 アハハ。ド直球に聞きますね(笑い)。分かんないですね。どう決まったかによるんじゃないですかね。自分の心、納得、満足できるのかが根本。もしか満足したら考えるかもしれないし。ただ、確実にうまくなってるんで、羽生結弦。ヘルシンキと比べてジャンプは1本少ないし、後半もサルコーじゃなくトーループですけど、ノーミスや崩れなくなった強さは確実に上。あのころは偶然「ゾーン」に入っていた。今は狙える。今回は点数が出ないジャンプたちだったけど、間違っていなかった感触はある。だから今、限界だからやめる感触はない。

-来季のプログラムは

羽生 4回転半を「天と地と」に入れたい思いがある。まだ確定ではないですけど「天と地と」はやりたいかな。4回転半が入れば印象が変わる。この子(プログラム)の良いところを見せたい、完成させたい。

-4回転半の習得状況は

8分の1回れば立てる。ただ、そこまでに酷使してて、痛みやダメージが確実にたまっている。2月の終わりまでに降りられたら今大会に入れようと決めていたけど、降りられなくて。かなり死ぬ気でやった。ほかのジャンプを跳ばずに2時間ぶっ続けで4回転半とか。平均して1日45分間は練習していると思います。