日本フェンシング協会は19日、都内で理事会と総会を開き、新理事体制を承認した。男子フルーレの08年北京オリンピック(五輪)個人、12年ロンドン五輪団体で日本最高の銀メダル2個を持つ太田雄貴会長(35)が会見し、新理事20人を発表。自身の退任と新会長にタレント武井壮(48)が就く人事が発表された。

武井新会長は「非常に重い役職。会長という肩書をいただいたが、1人のアイデアマン、フェンシングを愛する1人として、例えば街を歩いている人に聞いたら、プロ野球選手のように誰もがフェンシング選手のことが分かるような日本にしていきたい」と所信表明した。

4年間の任期を終えて「卒業」する太田氏はフェンサー、メダリストとして、この種目を象徴する存在だったが、さらに突き抜けるためには「まだまだ足りていない」と感じていたという。「武井さんにはなかなか首を縦に振っていただけず、最後は半ば折れるような形だったんですが、今後の協会には『太田だからできた』といったような、属人的な運営体制からの脱却を図り、新たな組織体制を構築する必要があります。武井さんは陸上の選手(十種競技の元日本王者)でフェンシング経験はないけれど、会長に必要な能力はビジョンを掲げられること、大きな発信力があること。この半年、1年と後任を探しているうちにようやく『この人だ』という人を見つけることができた」と説明した。

武井新会長も「自分もマイナー競技の出身で、日本一になっても生活が豊かにならなかった。(芸能界に)道を変えて10年」で現在の立場を確立した。その経験を「フェンサーに伝えていきたいし、フェンシングの魅力を伝える作業はまだまだ足りていないと思っている。発信していきたい」と抱負を語った。

太田氏は何らかの役職で武井新会長を支えていく。同時に、国際フェンシング連盟(FIE)副会長の職は今後も任期まで全うし、立候補している国際オリンピック委員会(IOC)アスリート委員会メンバーを目指す国際的な活動などは継続していく。【木下淳】

◆武井壮(たけい・そう)1973年(昭48)5月6日、東京都生まれ。神戸学院大で陸上を始める。10種競技を志してから、わずか2年半で97年の日本選手権優勝。スポーツトレーナーの傍ら芸能活動を始め、12年に中居正広が司会のフジテレビ系「うもれびと」に出演し「百獣の王を目指す男」としてブレーク。ダンサーやライター、司会業など多彩な才能を発揮。本田圭佑が発起人の東京都社会人サッカーリーグ3部のEDO ALL UNITED監督も務めている。175センチ、69キロ。血液型A。