世界的な金融危機が五輪の開催準備に影を落とし始めた。国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長はこのほど、2012年ロンドン五輪の選手村建設費用が確保できず、英政府が9000万ポンド(約148億円)を注入することになったと明かした。さらに波紋が広がる可能性はある。

 同五輪の選手村は、大会後の民間への分譲を前提にオーストラリアの不動産開発会社が総額10億ポンド(約1640億円)の建設費の一部を負担する予定だった。しかし金融危機の影響で資金が集まらず、政府が緊急支援を決めた。ロゲ会長は「今後も資金が集まらない場合は大会後の売却益で相殺される」と説明したが、英国の景気が後退する中で先行きは不透明だ。

 14年ソチ冬季五輪も、ロシア経済の急速な悪化で不安が広がる。高成長を支えた原油の価格が下落。金融危機の影響で財閥や大手企業は資金難に陥った。ほぼ全面的に新設される五輪施設の建設入札に対し、まったく応札がなかったという地元報道もある。

 五輪テレビ放送権料とスポンサー料を主な財源とするIOCの財政状態は堅実という。だがロゲ会長は「これから個人消費への影響も出るだろうし、金融機関救済に資金を注入している各国政府がこれまで通りにスポーツ関連予算を確保できるかも分からない」と警戒した。(共同)