ラグビー・トップリーグ(TL)のトヨタ自動車のSO広瀬佳司(34)が今季限りで現役引退することが11日、分かった。当面はラグビーから離れて社業に専念する予定。94年、京産大3年時に初の日本代表入りし、94年10月の韓国戦で初キャップ獲得。TLでは04年度、05年度の2年連続で得点王、ベストキッカーを獲得するなど、SOとして日本ラグビー界の一時代を築いた名選手が表舞台から退くことになった。

 日本ラグビー界の名選手がまた1人ジャージーを脱ぐ。11日、ラグビー部のミーティングに出席するため豊田市内のトヨタスポーツセンターに姿をみせた広瀬は「監督には引退することを話した。チームメートも(引退の決意を)わかってくれていると思う。今はもうすっきりした気持ちです」と、吹っ切れたような表情で心境を語った。

 昨季は主力メンバーとしてチームを引っ張ったが、春先のけがで出遅れた今季は出場機会が極端に減少した。TLのリーグ戦3試合に出場したものの、先発出場は2試合にとどまった。「ミスタートヨタ自動車」も、今季は忍び寄る年齢的な衰えなどとの闘いを余儀なくされていた。

 象徴的だったのは、1月26日のTLリーグ第12節東芝戦(花園)。ほぼ正面の45メートルペナルティーキックを2回連続で外したシーン。ティーではなく砂の上にボールを置くスタイルからの正確無比なプレースキックで“スーパーブーツ”の異名を取った全盛時には考えられないプレーだった。また、チームでは、SOで正面、黒宮ら若手の台頭が区切りをつける要因にもなったと考えられる。

 94年、大学3年で日本代表入り。94年10月の韓国戦で初キャップ獲得した。その後3度のW杯を経験し、06年2月に日本代表引退を表明するまで10年以上も代表の中心選手として活躍。日本を代表するプレースキッカーとしてキャップを40まで伸ばした。96年、トヨタ自動車に入社した後も中心選手として活躍。TLでは04年度、05年度と2年連続で得点王、ベストキッカーを獲得するなど数々の栄光を手中に収めてきた。

 広瀬は今後について、チームに残らず、社業に専念する意向を示している。また、かつて「指導者としての目線でチームを見ていることもある」と話したこともあった。一時代を築き上げた名選手の経験を後進に伝えていく意味で、引退後も日本ラグビー界になくてはならない存在であることは間違いない。今後、指導者として復帰する可能性もあるが、ミスタートヨタ自動車はひとまずラグビー生活に区切りをつけた。

 ◆広瀬佳司(ひろせ・けいじ)1973年(昭48)4月16日、大阪・茨木市生まれ。島本高から京産大へ。大学3年時の94年に日本代表入り。同年10月の韓国戦で初キャップ獲得。96年にトヨタ自動車入社。98年全国社会人大会で優勝を経験。トップリーグでは04年度、05年度の2年連続で得点王、ベストキッカーを獲得。06年2月に日本代表引退を表明。代表キャップは40。95、99、03年の3度W杯を経験。170センチ、74キロ。