<スキー:全日本選手権>◇2日目◇22日◇札幌・ばんけいスキー場

 女子で長野五輪金メダリストの里谷多英(31=フジテレビ)が、25・42点で12年ぶり8度目の優勝を果たした。公式戦の優勝は1999年(平成11年)2月のW杯猪苗代大会以来、9年ぶり。今季は2月のW杯猪苗代大会で2年ぶりに実戦復帰したものの14位。関係者の間で「今大会で引退」とささやかれていたが、大会直前に10年バンクーバー五輪挑戦を宣言。その意気込みを結果で示した。今季W杯種目別の覇者、上村愛子(北野建設)は欠場した。

 強い里谷が帰ってきた。前半から積極的に攻め、地元札幌のファンが待つゴールに飛び込んだ。タイムはただ1人26秒台となる26秒86をマーク。9年ぶりの表彰台の頂点に「真ん中から見る景色はよかった。サインとか頼まれるのは久しぶり。いいころは何年も前だけど、近づいたかな」と喜んだ。

 忘れていた姿勢を思い出した。予選を1位で通過。決勝でも気温上昇で軟らかくなった雪質でコースアウトする選手が続出する中、抜群のバランス感覚で圧倒し、ターンで13・7点の最高得点を出した。上村は不在だったが「私もまだまだ成長期。追う立場に変わって初心を思い出した。全力で滑ることだけだった」と無心が好結果を呼んだ。

 今季2年ぶりに実戦復帰したが、31歳の年齢に加え、首痛、腰痛を患い、一時は心が引退に傾いた。関係者も“その時”への準備を進めていた。実は今季最終戦となる今大会、最終日の23日に急きょ団体戦を編成。里谷には長野五輪に出場した選手をチームメートにつけた。関係者は「これだけの功績を残した選手が寂しくやめていくのは残念。もしやめるなら、みんなで花道を飾らせてあげたかった」と明かした。

 しかし、上村の活躍などに刺激され、本人は1週間前に現役続行を決意。最高の結果に、里谷は「この2年間お世話になった人、友達に見てもらえてよかった。続けることを決めて気持ちが入れ替わった」。これで来季のW杯代表も見えてきた。全日本スキー連盟(SAJ)の高野ヘッドコーチも「いい時の里谷だった。世界のトップレベルにいる」と評価した。

 来季に向けて、休みは取らず、今日から練習に入る。「来季の世界選手権、10年バンクーバー五輪でもっといい景色を見てみたい」。復活した女王が3度目の五輪メダル、2度目の金メダルへ動き始める。【松末守司】