<柔道:全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇6日◇福岡国際センター◇女子48キロ級

 女子48キロの谷亮子(32)は決勝で山岸絵美(21)に優勢負けしたが、5大会連続で北京五輪代表に選出された。

 誰よりも笑顔で臨むはずだった会見で、谷は複雑な表情を浮かべた。「5回目の出場になりますが、オリンピック3連覇をぜひ達成したいと思います」。何度も繰り返してきたフレーズにも、力がこもらない。まさかの敗戦。それも、2年続けて違う相手に敗れた。「気持ちの引き締まりがなかった。盛り上がりが足りなかった」。敗因を、精神面に求めて言った。

 15度目の優勝を目指し、危なげなく勝ち上がった。山岸との決勝も、開始34秒に送り足払いで効果を奪った。しかし、1分54秒にともえ投げの有効で逆転された。3分すぎには大外返しで再び有効を奪われた。懸命にポイントを奪おうと動き回るが、21歳は崩れず。終了のブザーに小さくガッツポーズする山岸の横で、がっくりひざに手をついた。

 昨年も決勝で福見に敗れた。それでも世界選手権代表に選ばれた。金メダル獲得で「自信がついた」と話したが、大会前には「負けて行くんだから勝たければ」というプレッシャーがあることも明かしていた。今回も強化委員会全会一致で五輪代表に推された。昨年以上に大きなプレッシャーに襲われることになる。

 「今でも進化している」と谷自身は言うが、山岸は「勝つつもりだった」と話した。国内でも絶対的な女王ではなくなっている。海外のライバルも、負けた事実を知って自信を持って臨んでくるはずだ。日本人初の5大会連続出場を果たしても、それで満足はできない。「ママでも金」。谷の頭には、それしかない。【荻島弘一】