<柔道:全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇6日◇福岡国際センター◇女子57キロ級

 女子57キロ級で準優勝に終わった佐藤愛子(24=了徳寺学園、旭川南高出)が、これまでの国際大会の実績を評価され、大会後に発表された北京五輪代表に選ばれた。

 笑顔は北京本番まで取っておいた。大会後の代表決定会見。喜びたいのをぐっとこらえ、佐藤は無表情を取り繕った。「優勝して行きたかった」。淡々と話していたが、それでも会見後、緊張がほぐれると、口をつく言葉に実感がこもっていた。「ホッとしました。もう4年前のことは忘れました。やっぱりうれしいですね」。夢がかない、自然と顔がほころんだ。

 4年前の悪夢をようやくぬぐい去った。52キロ級で狙ったアテネ五輪の最終選考会は、減量に苦しみ惨敗。それを教訓にし、スタミナの心配がない57キロ級に転向した。それが大正解だった。この日の決勝も松本に先にポイントでリードされたが、残り14秒で相手を崩し、効果を奪い追いついた。最後は判定で敗れたが、「課題が見つかった。勝って行きたかったけど、むしろ負けたのは良かったかな」とプラスにとらえた。07年アジア選手権金、世界選手権銅メダルと4年間で積み上げた実績から文句なしで代表に選ばれた。

 有言実行だった。正月に恩師である旭川南高柔道部の中野政美総監督に新年のあいさつの電話で約束した。「必ず目標を達成してきます」。会場に応援に駆けつけた父哲夫さんも「いつも北京に連れていくと言ってくれていた。娘はあまり口には出さないタイプだが、相当の覚悟があったんだろう。長いようで短い4年間でした」と喜んだ。

 親友でライバルの上野順は、優勝したが代表から漏れた。10歳で出会い、旭川南高を卒業する6年間、ともに励まし合い成長してきた。卒業後、進路は大学、社会人と分かれたが、常にメールで連絡を取り合い、離れてもお互い支え合ってきた。「2人で出たかった。順恵の分まで頑張る。金メダルを取りたい」。親友に北京で金メダルを取る姿を見せるつもりだ。

 絶対的な女王が不在の57キロ級だけに、十分チャンスはある。「外国人のほうが戦いやすい。五輪では苦手な日本人と戦うことがないので、思い切りやりたい」。旭川南の先輩、96年アトランタの恵本裕子、04年アテネの上野雅は、ともに選考会敗退をバネに金をつかんだ。佐藤にも「強者のDNA」は、しっかり流れている。【松末守司】