7度の4大大会優勝を誇る世界ランキング1位の女王ジュスティーヌ・エナン(25=ベルギー)が14日、地元ベルギー・リムレットで記者会見を行い、現役引退を表明した。突然の引退理由について「もう気持ちが残っていない」と話した。WTA(女子テニス協会)によると、世界1位のままで現役を退く選手は初めて。4度優勝を誇る25日開幕の全仏オープンには出場せず、この日限りでラケットを置いた。今後については未定。

 突然の引退発表だった。会見場を埋めた報道陣を前に、エナンは切り出した。「自分の人生はすべてテニスとともにあった。もうこれ以上望むことはない」。隣に座ったロドリゲス・コーチが泣いていたが、エナンに涙はなかった。

 4大大会7度制覇の女王も、今年に入ってライバルに完敗するようになった。シャラポワやS・ウィリアムズから1ゲームも取れないセットもあった。「この数カ月、世界のトップとして必要な精神力がなくなった」と気持ちが続かなくなったことを明かした。

 半年前から引退について考えるようになったという。先週のベルリンの大会で3回戦で敗れ、引き際の決心がついた。今週のイタリアンオープンは疲労を理由に欠場していた。「もう心身共にバランスが崩れてしまった。今は悲しいよりホッとしている」と話し、今後の去就については具体的に明言しなかった。

 167センチ、57キロと小柄ながら、全身を使った強烈なストロークでパワーテニスに対抗した。昨年引退したクライシュテルスと4大大会決勝で3度対戦するなど「ベルギー時代」を築いた。一方でケガや病気とも闘った。04年に初めて世界1位になったときは、ウイルス性疾患で半年ほど棒に振った。06年全豪決勝では体調不良で途中棄権。持病のぜんそくにも苦しんだ。

 12歳で母をがんで亡くし、父とは口も利かない絶縁状態を経験した。02年にアーデン氏と結婚したが、昨年、離婚した。つらい人生をテニスに打ち込むことで乗り越えてきた。しかし、その気持ちも、わずか25歳にして、燃え尽きる時を迎えたようだ。