<レスリング:高校総体>◇最終日◇4日◇埼玉県東松山市・大東大東松山校舎総合体育館

 「ロンドンの星」が現れた。個人戦55キロ級決勝で五十嵐琢磨(秋田商3年)が谷田旭(静岡・沼津城北3年)を2-1で下し、初優勝した。3月の全国選抜、4月のJOCジュニア五輪に続き全国3冠目。将来の日本代表入りを目指し、17歳が結果を積み上げている。96キロ級では金沢勝利(岩手・種市3年)が2年連続で準優勝に終わった。

 想定外の事態だった。第1ピリオドで五十嵐は、寝技から相手の腕を取り、フォールを奪うはずだった。しかし相手に返され、背後を取られて1点を失った。「かなり焦りました。今年の春から、ピリオドを落としたことがなかったので」。第1ピリオドを0-1で終え、今季初めて劣勢に立たされた。

 それでも選抜王者は冷静だった。低い姿勢をキープしながら勝機を探り、タックルで倒して1-1の同点に。さらに背後に回って相手の動きを封じ、2-1で逆転した。「今まで完ぺきに勝ってきたので、決勝はいい経験になりました」と笑顔で振り返った。

 小3でレスリングを始め小4から県大会6連覇。秋田商では1年から団体戦メンバーに入り、県外の強豪と戦って技を磨いてきた。アテネ五輪フリースタイル84キロ級代表の横山秀和監督(37)は「下半身が強いしスピードがある。五輪選手の素質を持っている」と評価。五十嵐も「4年後か8年後の五輪に出たい」と話した。目標は明確。今後の成長から目が離せない。【柴田寛人】