北京五輪の競泳女子平泳ぎで、メダル獲得が期待されながら届かなかった種田恵(21=JSS長岡、神奈川大-札幌大谷高)が、「脱アイドル」で競技に集中する。5日、東京・辰巳国際水泳場で行われた日本学生選手権100メートルに出場、1分9秒17で3位に終わった。五輪前は写真集の表紙を飾るなど美人アスリートとして注目されたが、今後は競技に専念する方針を掲げた。

 北京五輪後初の100メートルで、種田はライバルに敗れた。北京で8位入賞し、この日2位の北川麻美(早大3年)に0秒52届かない3位。北京で1次予選敗退に終わった雪辱は、ならなかった。「調子が悪かったので3位までに入れるとは思わなかった」と冷静に分析したが「北川さんは意識しましたが、離されてしまいました。悔しさが残ります」と自分の泳ぎに納得できなかった。

 五輪前に篠山紀信氏が撮影した写真集「VENUS北京」で表紙を飾り、美女選手として一気にブレークした。「タネメグ」と知名度も上がり、非公式ながらCM出演の話もあった。種田は「メディアが取り上げてくれたのはうれしいし励みになった」と前向きにとらえた。その半面、取材が殺到し、休む時間を取れなかった。今季自己ベストが世界ランク3位だった200メートルも8位に終わり、7位だった金藤理絵(東海大)に日本人トップの座を奪われた。

 だから、決めた。「今後のメディアの露出は試合に集中できる範囲で」。アイドル扱いからは卒業する。現在、神奈川大の4年。来春の卒業後も、同大では大学院での籍の確保や職員採用などのプランが浮上している。指導するJSS長岡の竹村吉昭コーチは「今後については選択肢があり、もう少し考えます」と、複数の企業が種田に興味を示していることも明かした。現役続行の条件は整いつつある。

 「五輪の借りは五輪で返すしかない」。4年後のロンドン大会へ、竹村コーチは愛弟子の奮起を期待する。今月末のおおいた国体以降はスケジュールが白紙の種田も、それは分かっている。【上野耕太郎】