<フィギュアスケート:全日本選手権>◇27日◇長野・ビッグハット

 安藤美姫(21=トヨタ自動車)は直前練習で村主と激突して右ひざを負傷したが3位を死守。

 「事件」が起きたのは、最終グループの演技が始まる前の6分間練習だった。3分がすぎたころ、リンクの中央で、安藤は村主と背中からぶつかり、派手に転んだ。波乱の08年は、最後まで苦難が待っていた。

 右足を痛め、演技構成を変えた。予定した4回転ジャンプは、3回転フリップにした。その後のジャンプも回転不足になったり、転倒する場面もあった。体の異変に、逆転優勝への道を閉ざされた。演技後、取材エリアには、右ひざをアイシングし、右足を引きずりながら現れた。

 安藤

 (ぶつかった時は)村主選手も痛かったと思うので…。右足の感覚が…、6分間練習の途中から筋肉も張っちゃって、すごい悔しかったです。けど、痛かったです。

 リンクで見せなかった涙がこぼれた。それでも、表彰台は死守した。3年連続の世界選手権への切符も手に入れた。

 今年3月の世界選手権は、悔しさしか残っていない。左ふくらはぎを痛め、やむなく途中棄権。泣きながらリンクを去った。一時は、引退も頭をよぎった。だが、ファンの応援などに後押しされて、出直しを誓った今シーズン。脱臼癖のある右肩の痛みにも耐えながら、滑り続けた。

 かつての世界女王には、これでもかと苦境が待ち受ける。「棄権した時と同じ舞台に立てる切符をいただいた。同じ失敗をしないように、表彰台に乗る気持ちを強く持ちたい」と安藤。いつか笑う日まで、気持ちは決して切らさない。【佐々木一郎】