<大阪国際女子マラソン>◇25日◇大阪・長居陸上競技場発着(42・195キロ)

 ママさんランナーが12年ロンドン五輪へ大きな1歩を踏み出した。北京五輪陸上女子長距離代表の赤羽有紀子(29=ホクレン)が、マラソン初挑戦で2位に入った。スタートから先頭集団を引っ張りながら、31キロ付近で優勝した渋井陽子(29=三井住友海上)のペースアップに対応できず、離されたが、初マラソン歴代7位となる2時間25分40秒でゴール。8月の世界選手権(ベルリン)の代表入りへ可能性を残した。

 ゴールテープの先に夫周平コーチ(29)がはっきり見えた。ラストの直線。赤羽は歯を食いしばり、最後の力を振り絞った。長女優苗(ゆうな)ちゃん(2)の声がスタンドから響く。「ママ、ファイト、ママ、ファイト…」。真っ先にゴールはできなかったが、誇れる2位。夫に笑顔で出迎えられ、胸に飛び込んだ。控室では娘から「お疲れさま」と言われ、「ありがとう」と抱きしめた。

 家族3人での挑戦だった。周平コーチから「31キロの坂でスパートしろ。だれが見ても分かるように」と指示を受けた。その言葉どおり、30キロ付近で渋井と先頭集団を抜け出したが、「ペースも半端なかった」。渋井のスパートについていけず、引き離された。だが、気持ちは切れなかった。給水所のドリンクに家族の写真を張り、優苗ちゃんから沿道5カ所で声援を受けた。「(距離は)思ったより短く感じた。楽しかった」と自分の力は出し切った。

 北京五輪の悔し涙がマラソン挑戦を決定づけた。五輪では1万メートルは20位、5000メートルは予選落ち。消化不良だった。5000メートルのレース後、スタンドで待つ周平コーチの元に泣きながら戻った。「ロンドンまでリベンジする」。先月19日から過去最長となる34泊35日の徳之島合宿を敢行。後半勝負の練習に励んだ。周平コーチは「準備期間は満足できた。今はスッキリしている。あきらめがつく」と納得の表情で話した。

 ママさんランナーとして勇気を与えている。多くの母親から手紙やメールをもらう。「仕事は1回辞めたけど、赤羽さんを見ていたら、もう1回チャレンジしたくなりました」というメッセージもあった。日本のママさん代表のつもりで42・195キロを駆け抜けた。

 目標に置いた世界選手権代表の可能性は残した。「経験を積んでいけたら。オリンピックも見えてくる。経験は大切だと思います」。次は世界選手権の選考レース、名古屋国際(3月)を見て判断する。ママの挑戦はまだまだ始まったばかりだ。【長島一浩】