<フィギュアスケート:世界選手権>◇最終日◇28日(日本時間29日)◇米カリフォルニア州ロサンゼルス

 表彰台で、安藤美姫(21)は誰よりも笑顔を見せていた。会場の大声援に気持ち良さそうに手を振ったかと思えば、感慨深げな表情で天を仰いだ。07年の世界選手権を制したが、連覇に挑んだ昨年は左足の故障で途中棄権。度重なる故障もあって、昨季終了後には本気で引退も考えた。モロゾフ・コーチに「ミキをこのままで終わらせたくない」と説得され、思いとどまった。「メダルを取りたいと思って取れたので意味がある。やっとカムバックできた」。2季ぶりのメダルに酔いしれた。

 1週間前までは、まともにジャンプもできなかった。約3週間前の練習中に左太もも裏を痛め、その後の1週間はジャンプ練習なし。約2週間前から再開も、調子は上がらなかった。それがこの日は回転不足が1度あった以外は、ほぼ完ぺきに跳んだ。代名詞の4回転や連続3回転は足の状態やモロゾフ・コーチの意向もあって回避。ジャンプの正確さと、向上した表現力で久しぶりに存在感を示した。

 モロゾフ・コーチは「周囲には『美姫はもう成長しない』という声もあったがメダルを取った。日本連盟には、僕のやり方に口だししてくる人もいるが、誰にも邪魔されなければこうして結果も残せる」と胸を張った。「氷の上で泣いて練習にならないこともあった」と振り返る安藤は「少しずつだけど成長できている。バンクーバー五輪までに連続3回転や4回転をしっかりと入れた演技をしたい」と笑った。忘れかけていた自信と輝きを取り戻した21歳の元女王が、バンクーバー五輪で再び頂点を目指す。