北京五輪の柔道女子63キロ級で連覇を達成した谷本歩実(27=コマツ)が亡き祖父への思いを背負い、4日開幕の全日本選抜体重別選手権(福岡)に強行出場する。福岡市内で行われた3日の前日会見で、祖父豊治さんが3月25日に79歳で亡くなったことを明かした。8月の世界選手権への選考を兼ねた重要な大会。故障でドクターストップがかかるなど調整不足だが、祖父のために完全燃焼を誓った。
谷本は悲しみを胸の奥にしまった。そして澄み切った表情で「1週間前に祖父が他界しました。頑張っている姿を見せたかった。でも死と向き合い、挑戦する勇気がもらえた」と大会にかける決意を明かした。
3月25日、故郷の愛知県で祖父の豊治さんが闘病の末、79歳で亡くなった。アテネ五輪も北京五輪もテレビの前から声援を送ってくれた。「一番応援してくれた。私が一番、遺伝を受け継いで、こだわりがあって頑固な性格や体形とかそっくりだった」。豊治さんは亡くなる直前にも呼吸器を外しながら懸命に「ケガに気をつけて。体を大切にして」と励ましてくれた。
最後を見取ることはできたが、大会に向けて調整不足は明らか。持病の腰痛など故障も重なり金メダリストが「1回戦で負けるかもしれない」と自覚するほどの状態だ。それでも「周りからは『五輪でメダルを取ったプライドを考えて万全の状態で臨め』と言われた。10人中10人が反対。でも挑戦することで見えるものがある」と強行出場を決断した。
優勝した3月のW杯プラハ大会前は引退の考えもよぎったが、今は迷いもない。畳の上に立ち続けることが、愛する祖父への最高の供養だと信じている。【広重竜太郎】



