<陸上:仙台国際ハーフマラソン>◇10日◇仙台市陸上競技場~仙台市役所市民広場の21・0975キロ

 ママさんランナー赤羽有紀子(29=ホクレン)が、母の日にママの強さを見せつけた。中盤から独走し、1時間8分50秒で初優勝。練習の一環として臨み、世界選手権(8月、ベルリン)のマラソンに向けて弾みをつけた。日本選手としては、昨年優勝した野口みずき(30)に次ぐ、大会歴代2位の好記録をマーク。長女優苗(ゆうな)ちゃん(2)の首に金メダルをかけ、母ミヨ子さん(61)に感謝の走りを見せた。

 「ママさん、頑張れ ! 」。沿道の声援に背中を押されるように、赤羽は走った。6キロすぎから、ケニア出身のモンビとのマッチレースになったが、8キロ付近から独走。中間点からゴールまでダラダラと約35メートルも上る後半も失速せず、杜(もり)の都を駆け抜けた。ゴールで待っていた優苗ちゃんを抱き上げると、左のほおにそっとキスした。

 「ママ、どうだった?」と聞かれた2歳の長女は「悪くなかった」。辛口評論家のような口ぶりに、夫の周平コーチは「厳しいですよねえ」と苦笑いした。悪くないどころか、自己2番目の好タイム。北京五輪を見据えて出場し、昨年優勝した野口みずきに、あと25秒まで迫る走りだった。

 「今日は本当に、(1時間)9分を切れるとは思ってなかったので、こういう走りができて良かったです。後半もダレずに、イーブン(ペース)気味で行けた。距離は、以前より短く感じました」。城西大時代に3度走ったこの大会は、1時間11分23秒がベスト。卒業から7年たち、母になって、強くなった。

 栃木で米農家を営む両親は、田植えを終えて一段落し、仙台まで来てくれた。試合や合宿の時、夫婦どちらかの両親に娘を預けて、面倒をみてもらうことがある。この日も、優苗ちゃんは母ミヨ子さんらと沿道にいた。「母の前で優勝できたのもうれしいです」。母の日のために用意した財布とともに、ダブルプレゼントとなった。

 ハーフマラソンで結果を出し、残り半分の距離を埋めるための日々は、これからも続く。「練習を積んで、上位の方の先頭集団についていきたいです」。娘を励みにママは走り、夫はコーチで、両親はサポート役に回るという赤羽一家。本番のレースは、愛娘の3歳の誕生日の3日後だ。【佐々木一郎】