ロンドン五輪に向けて、新星が「誕生」した。昨年11月の世界女子ボクシング選手権で日本人最高の8強入りした箕輪綾子(21)だ。日体大4年で、空手や柔道でも結果を残す「格闘技ウーマン」。女子ボクシングは13日にベルリンで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、正式にロンドン五輪に採用されることが決まった。一夜明けた14日、箕輪は「出場できたらメダルを持ち帰りたい」と早くも闘志を燃やしている。

 箕輪が女子ボクシング五輪採用の吉報を受けたのは14日の朝だった。友人からのメールで知らされ「すごくうれしかったです」。メダル取りへ、一気に意欲も高まった。

 K-1観戦が好きで中2でボクシングを始めた。昨年11月アマの世界女子ボクシング選手権にバンタム級で出場し、8強入り。毎朝10キロのロードワークで培ったスタミナを生かし、攻撃的な打ち合いを得意とするファイタータイプだ。高校時代は空手部の顧問にスカウトされ空手を始め、3年時の高校総体では5戦全勝で団体組手の優勝に貢献した。日体大の授業では柔道で黒帯をとった。下半身のバランス感覚やストレート系パンチの切れなど、空手経験はボクシングにも生かされ、大学入学後は11戦で10勝1敗を誇る。

 負けん気が強く、努力家だ。所属する横浜さくらボクシングジムを初めて訪れた時も、男子と手合わせして思うようにいかず、涙した。小6の時、父文男さん(享年44)を心筋梗塞(こうそく)で亡くした。現在は地元宇都宮を離れて1人暮らし。「基本的に生活費は自分で稼ぐ。ボクシング用品を買うお金や試合のチケット代も自分で出します」。プールの監視員と、卒業後の就職が内定済みの不動産業ウイングコーポレーションのアルバイトを掛け持ちし、夜はジムで鍛える日々だ。

 五輪は3階級導入予定で、現在箕輪が出場しているバンタム級(54キロ)はない。出場には51キロまで落とす必要があるが、箕輪は前向きだ。「もし出場できたらメダルを日本に持ち帰りたいし、歴史に名を刻みたいですね」と白い歯を見せた。【鎌田良美】