<女子テニス:東レ・パンパシフィック・オープン>◇最終日◇3日◇東京・有明コロシアム
杉山愛(34=フリー)が17年間の現役生活に別れを告げた。ハンチュコバと組んだダブルス決勝で有終Vを狙ったが、クレイバノバ(ロシア)スキアボーネ(イタリア)組に4-6、2-6で敗れ、準優勝に終わった。二人三脚で世界と戦った母の芙沙子コーチ(60)との挑戦も終わり、「普通の親子」に戻れる日が来た。
コートから立ち去ろうとした瞬間、杉山が涙した。大会初日の引退セレモニーで号泣したこともあり、この日はずっと笑顔で通していた。かつて名コンビを組んだクライシュテルスからのメッセージを読み上げられても泣かなかった。大会側からブーケを贈られ「いつかこれを持てる日が来るように頑張る」と、笑いも誘った。だが退場間際に、スタンドで後輩の森田あゆみらが泣いているのを見て感極まった。
杉山
出る涙がもうないと思っていた。でも涙が枯れることはないんですね。いろんな人に思われながら現役を去ることができて、恵まれている。
母でコーチの芙沙子さんとの長い旅も終わった。母は大会過去最多9513人の観衆に惜しまれながら退場する娘の姿を見送り「母とコーチとしての9年間は特別な感じだった。これで普通の親子に戻れる」と感慨にふけった。母がコーチについたのは01年。それ以前も遠征に帯同することもあったが、1人の人間として独立したいと考えた杉山は「たまに来てくれればいい」と、距離を置いた時期があった。それを境に不振に陥り、電話で泣きながら母にコーチを依頼。世界ランクトップ10入りの出発点になった。
6月に「引退の時は指導者ではなく、母でいたい」という同コーチの思いもあり、コンビを解消したが、現役最後の今大会を前に復活。大会序盤に杉山が体調不良に苦しむと、母が懸命に看病してくれた。この日の試合でも相手にパワーで圧倒される中で、「プレーは悪くない」と勇気づけてくれた。
娘との今後について、芙沙子さんは「(杉山が)昨年、屋久島に行って『天空みたいできれいだった。一緒に行こう』と言っていたので、旅行でもできれば」と話す。杉山も「母なしに自分のテニス人生は語れない。これから親子に戻るので親孝行したい」と感謝した。有終Vはならなかったが、杉山は完全燃焼。母子で築いたテニス人生の輝きは色あせない。【広重竜太郎】


