秋葉忠利広島市長(66)と田上富久長崎市長(52)が11日、広島市役所で記者会見し、2020年夏季五輪を招致する意向を表明した。両市を中心に、周辺自治体にも協力を呼びかける。被爆地から核廃絶、平和を世界に訴える招致活動に、被爆者らからも歓迎の声が上がる一方、資金やインフラ面など疑問視する声も上がった。日本オリンピック委員会(JOC)は表明を歓迎も、五輪憲章が1都市での開催を原則としていることから、慎重に協議する方針だ。

 広島市の秋葉市長は会見で「五輪は核兵器廃絶と世界平和のシンボル。実現に向け可能性を検討したい」と表明した。長崎市の田上市長も「被爆地ができる新しいチャレンジだ」と話した。13日に秋葉市長がJOCを訪れて協議するほか、近く政府にも経緯を説明する。被爆両市を中心とした複数都市への招致を念頭に、賛同する市長をメンバーとする検討委員会を近く発足させる。20年五輪の開催地は13年決定の予定で、国内候補都市の選定は来夏。両市では「来春までに可否の結論を出す」という。

 秋葉市長が会長、田上市長が副会長で、国内外3100都市が加盟する平和市長会議は20年までの核廃絶が目標。核廃絶を訴えるオバマ米大統領のノーベル平和賞受賞も決定したばかりだ。田上市長は「核廃絶の国際世論を加速する大きな力になり、チャレンジする価値は十分ある」とした。

 長崎原爆遺族会顧問の下平作江さん(74)は「世界中から集まった人に原爆資料館を見てもらい、被爆者の声を聞いてほしい」と賛成。ただ、「狭い長崎に新たに競技場を作る土地はあるのか」と不安ものぞかせた。小学生のころ、広島県内できのこ雲を見たという京都市南区のホームヘルパー西川千鶴子さん(74)は「各国が金メダルの数を競う五輪は敵対視や争いのイメージもある。純粋に平和の祭典とだけは言えない」と、複雑な表情。両市で賛同の声が上がる一方、膨大な誘致費用を「別の平和イベントに使うべき」との声もあり、受け止め方はさまざまだ。

 JOCの竹田恒和会長は11日、「開催に関心を持つ都市が出てきたのは、JOCとして歓迎したい」とした。一方、1964年の東京五輪の馬術会場(軽井沢)など、分散開催は過去に例があるが、「共催は難しい問題。五輪憲章を分析しなくてはいけない」とも話した。五輪憲章では1都市開催が原則で、一部競技の他都市開催は国際オリンピック委員会(IOC)理事会の承認が必要。課題は多い。竹田会長は「東京の(敗因)分析が先で、日本が20年に立候補して勝てるかについても精査する必要がある」と話した。

 東京も、石原慎太郎都知事が20年の再挑戦に含みを残している。竹田会長は東京に配慮してか、13日の秋葉市長の訪問には「会議が詰まっている」として立ち会わない予定。東京を推してきたJOC幹部の1人は「大都市の東京で再挑戦が理想。困った」と話した。