<名古屋国際女子マラソン>◇14日◇名古屋市瑞穂陸上競技場発着

 加納由理(31=セカンドウィンドAC)が2時間27分11秒で優勝した。32キロ付近でスパートしてライバルを引き離す完勝劇で、国内3大レース(横浜国際、大阪国際、名古屋国際)初制覇。15シーズンぶりの「3大レース日本人未勝利」という危機も回避した。これで11月のアジア大会(中国・広州)代表選考会3レースも終了。同代表は16日に発表されるが、加納は今秋のニューヨークシティー・マラソン出場のため、辞退を表明した。

 最後まで乱れなかった加納の表情が、一変した。勝利を確信し、競技場の最終コーナーで帽子とサングラスを外し右手を突き上げた。ゴールテープを切ると、今度はその右手で顔を覆った。「練習でも『優勝するんだ』と、本当に泣いちゃうくらい追い込んできた。想像が現実になったんで」。自然と涙があふれた。

 序盤から理想的な展開だった。遅いペースの中、レースを引っ張る大南博の後方でじっと足をためた。勝負どころ32キロ付近の坂でスパートし、並走する伊藤を引き離した。「やられたことを勉強して、今度はやり返すと思ってスパートした」。優勝は07年北海道の1度。残る国内レースでは途中棄権の08年大阪国際をのぞく3レースで3位以内と、安定感はあるが、勝ちきれず。そんな経験も力に変えた。

 レース後、選出が確実なアジア大会について「出ません」と明言。同時期のニューヨークシティー・マラソン出場を狙っており、世界の強豪もそろう国際舞台でさらなる経験を積む方向だ。「そこから世界選手権、オリンピックというプランで行きたい」。12年ロンドン五輪を見すえた。【八反誠】