<女子テニス:東レ・パンパシフィック・オープン>◇3日目◇28日◇東京・有明コロシアム◇シングルス2回戦ほか

 世界ランキング67位のクルム伊達公子(エステティックTBC)が、2日連続で元トップ10プレーヤーを撃破して3回戦に進出した。同29位のダニエラ・ハンチュコバ(27=スロバキア)に第1セットこそ2-6で落としたが、第2セット第1ゲームから10ゲームを連取。第3セット4-0となったところでハンチュコバが棄権した。27日に同15位のシャラポワを破った勢いで、40歳の誕生日を逆転勝利で飾った。29日の3回戦で今年の全仏女王で同8位のスキアボーネ(30)と対戦する。史上初の40代でのツアー最年長優勝も見えてきた。

 40歳に迷いはなかった。第1セットを2-6で落としても、勝利への意欲は少しも衰えなかった。第2セット第1ゲームから何と10ゲーム連取。第3セットに4-0となったところで、ハンチュコバが棄権を申し出た。「(40歳で)これで怖いものなし」。不惑の伊達から白い歯がこぼれた。

 第1セットはハンチュコバの深いストロークに手を焼いた。リズムをつかめずにミスを重ねた。しかし、「どこかスキがあれば、チャンスが来る」と冷静だった。第2セットは第1サーブの入らないハンチュコバの第2サーブをねらい打ちした。プレッシャーをかけて、完全に主導権を奪い返した。

 40歳とは思えない力強いストロークは、相手の右肩も破壊していた。試合後、ハンチュコバは「(試合前から違和感があった)右肩に、第2セットのラリーで球を受けた時に何かが起きた。痛みが激しくなり、最後は手首がしびれた」と明かした。試合後はコート上のクルム伊達へ、観客みんなで「ハッピーバースデー」を歌い、誕生日と勝利を祝った。

 徹底した節制でアスリートとしての体を保っている。1日のスケジュールはどんなことがあっても崩さない。昨年から続いた足のけいれんも、オフに最大酸素摂取量を上げるトレーニングで克服した。関係者によると「90年代より数倍激しいトレーニングを積んでいる」という。試合中に飲む水にもこだわっている。全国から水を取り寄せ、科学的に分析してもらい、体にベストなものを選ぶ。前日にシャラポワとの2時間に及ぶ激闘を制したばかりだったが、「疲れてはいるけど、筋肉痛もないし、ひと汗流せば体は動く」とケロリとした顔で話した。

 3回戦進出でツアー最年長優勝も視野に入ってきた。今大会は4大大会に次ぐレベルで、昨年全米準優勝で世界2位のウォズニアッキ、今年のウィンブルドン、全米準優勝の同4位ズボナレワがいる。3回戦で対戦するのは全仏覇者のスキアボーネ。優勝まで、まだ4回勝たなくてはならない。ただハンチュコバは「今日のプレーなら、この先もいい成績を残すと思う」と予想した。

 復帰後、このレベルの大会で2勝したのは初めて。自信も手応えも十分。「この先も、できるだけチャレンジを続けていきたい」と生涯現役宣言も飛び出した。40代に突入しても、真っすぐなテニス人生に、まったく迷いがない。【吉松忠弘】