<アジア大会:レスリング>◇男子フリースタイル60キロ級ほか◇23日◇中国・広州

 レスリング男子フリースタイル60キロ級の小田裕之(22=国士舘大)が病魔との闘いを乗り越え、銀メダルを獲得した。決勝はガンゾリグ(モンゴル)に対し、第1ピリオド(P)をすくい投げで先制。だが第2Pに追いつかれ、最終Pは連続アンクルホールドなどで攻められ、最後はフォール負けした。試合後は号泣し「攻めが足りなかった。ブランクもあり、いつも言われていることができなかった」と言葉を絞り出した。

 1カ月半前に首回りに大きな術あとができた。今夏の検査で甲状腺の乳頭がんが発見された。6センチほどの球状のしこりができた。9月の世界選手権直前で、手術はアジア大会前に回避したが「世界選手権で初戦負けし、大事なアジア大会で休んでいる場合じゃないと思った。怖さはなかった」と競技のことが頭から離れなかった。10月上旬に手術をして、10日間ほど入院。一時は体重が4キロ増え、筋力も落ちたが、懸命の練習で照準を合わせた。

 初戦で北京五輪5位のキルギス人選手を破ると、準々決勝は残り6秒で逆転勝ち。その奮闘に観戦に訪れていた元横綱朝青龍関から「次もあるからこれで終わりじゃない」と声をかけられた。勝てば日本のフリースタイルとしては16年ぶりの金メダルだった。「出る以上は(ブランクは)関係ない」と言い訳は一切なし。悔しさは残っても、恥じることのない銀メダルだった。【広重竜太郎】